事業承継

民法遺留分規定の特例について(続き)

先月は、中小企業経営承継円滑化法(「円滑化法」)の民法の遺留分規定の特例の制度もまた注目に値する制度だということをお話ししました。

ただ、この制度も使いづらいと感じる点があります。それは、遺留分の特例の対象となる財産(株式、事業用財産)が、後継者が贈与によって取得したものに限定されていることです。遺言によって後継者が取得する財産には適用がないのです。

先月お話ししたように、民法の遺留分の制度とは、遺言や生前贈与によって被相続人(亡くなった人)から相続人が財産を承継した場合に、相続財産の一定の割合(遺留分)に満たない財産しか相続できなかった相続人から財産の分配を主張することができるというものです。遺言によって財産を承継する場合にも遺留分は問題になってくるわけです。

事業承継に限らず私たちがお客さまの相続対策のお手伝いをする場合においては、生前贈与の活用は最初に検討すべき項目ですが、不動産や同族株式といった財産を一度に移転するには贈与税等のコストが大きくかかるため、贈与で移転できる部分は時間をかけて少しづつ贈与をして、移転しきれない部分は遺言により相続の時に承継していただくというパターンが多いと思います。

結局、生前贈与の場合はコストの問題をクリアしないと現実に実行していくことが難しいのです。今回の遺留分の特例については、すでに後継者が生前贈与により株式等を承継している場合には、その効果を確実なものにするために活用していくことは有効だと思いますが、まだ承継が進んでいない場合には、基本的には贈与税というコストを軽減する「贈与税の納税猶予制度」とセットで活用の途を検討する必要があるのではないかと考えています。

 

株式会社LR小川会計 代表取締役社長 小川 泰延

 


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