有期雇用制度の導入を考えよう

100年に1度の激変

No119_1474673年末には期間工や派遣社員の契約打ち切りが『派遣切り』として社会問題化した。

この『派遣切り』はアメリカの金融信用システムが崩壊し、ローンが普及しているアメリカの消費スタイルが壊滅したことに端を発し、アメリカ社会の象徴である自動車や電気製品に対する需要が急速に消失してしまったことに起因している。

アメリカ産業の象徴であったGMを筆頭とするビッグスリーが破綻に瀕し公的救済を受ける事態になったこと、わが国でもトヨタが前期純利益2兆円に届く業績を上げていながら、今期は赤字に転落するとのことで、信用システムの崩壊が如何に大きな衝撃を与えたか「100年に1度」といわれる激震の大きさが理解できる。

この激震の中で、トヨタが9月いち早く『派遣切り』を実施し、この流れは一気に日本の産業界へ波及し、あっという間に、自動車産業をはじめ電気産業に及び製造業を中心に期間工や派遣社員の契約打ち切り、更には生産を中止する生産調整に入り、年末の『派遣切り』騒動となったのである。

派遣切りと働く価値観の変化

『派遣切り』にみる期間工や派遣社員という働く態様や働く環境は戦後大きく変わって来た。私が就職した昭和30年では就職先を選択できる余地はなかった。就職できれば、まず辛抱し『職』を身に付け『食』を確保することが先決であった。

その後、辛抱し苦労して手につけた『職』を基盤に自立し会社を興し、「日出ずる日本」を作り上げてきた。

終戦直後に社会を支えた第一世代、戦後育った我々第二世代は自分たちが辛酸をなめ、苦労した経験を次世代に背負わせまいとし、学歴社会へ向かって『職』ではなく『食』の苦労をしないように大企業サラリーマン社会を目指して育ててきたところに大きな問題が潜んでいると感じている。

働く環境は激変している

グーグルは創業者のラリー・ペイジとサーゲイ・プリンが1995年に出会って僅か10年余で世界を席巻する企業になった。

急速に伸びる企業もあれば、トヨタのように僅か1年で2兆円の利益を失う企業もあるし、上場会社の倒産も30社を超える。

私の平均余命も生まれた頃の44歳から40年以上も伸びて、長寿社会が実現したことで昔の二世代分も活きたことになる。

このように景気や経済の環境が変わるし、人の生きる環境や考え方も変わっている。

20年前はインターネットがなかった。携帯電話もなかった。技術革新のスピードもものすごく速い。このような変化の激しい社会の中で労働関係をみると、労働の流動化が進んだとはいえ、未だに終身雇用を前提としており、雇用者側の解雇権を制限している労働法制のあり方には一考の余地があるのではなかろうか。

変化に適応できる有期雇用制度を

労働法制の視点には多様な視点があると思うが、雇用される側の職業選択の自由を保証し、目まぐるしく変わる社会のニーズ、技術の変革を受け止め、企業が個人に求めるもの、個人が企業に求めるもののギャップを定期的に見直すシステムを雇用関係の中に取込むことである。

このためには働く機会を増やすため、定年制の廃止と有期雇用契約制度を採用することが望ましい。日常ルーチン業務に携わる大多数の人たちは、日常業務に忙殺されるため、日進月歩で進む技術や新しいスキルについて習得する機会が少ない。

企業としても供給する製品、商品、サービスは日々変化している。このような中で雇用関係を考えるとき、大多数の企業の経営者は働いている人が同じ仕事や職種を一生やって欲しいとは思っていない。日常ルーチン業務の中であっても日々成長して欲しいと願っているものである。

したがって、有期雇用制度を採用することによって一定期間経過後はあらたな技術やスキルを習得する機会を制度的に設けることは望ましいことと考える。例えば業務レベルで初回3年、再契約5~10年、60歳以上1~5年、契約更新にあたって企業と従業員のギャップ調整と再教育・訓練項目の調整期間を契約期間に応じて定めることなどはどうであろうか。

変化する社会に対応し労働市場の流動性を確保しながら安定した雇用制度を確立していくためには終身雇用制から有期雇用制へ転換する必要があると考えるのである。

LRパートナーズ代表社員小川 湧三

 


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