非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度の創設

No115_9225917本誌でも何度か記事になっていますが、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(中小企業経営承継円滑化法)が10月1日から施行されます。

この法律の大きな目玉は、相続税に関する「非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度の創設」です。

この制度は大雑把に言ってしまえば、亡くなった経営者から後継者が会社の株式を相続した場合には、その株式を相続したことによりかかる相続税の80%の納税を猶予し、一定の場合(例えば、相続した後継者が亡くなるまで株を保有していた場合)には相続税を免除するという制度です。

この制度を利用できる細かな要件は、相続税の改正がまだできていませんので改正法案の成立を待たなければ確定はしませんが、この制度の適用を受けることができれば、事業承継の大きな相続税の負担は軽減されることになります。

もしかすると、今まで後継者の方に少しづつ生前贈与してきていたことを止めて、この制度の適用を受ければいいとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

その場合には注意しておかなければならないことがあります。 それは、遺言等により事業を承継する後継者が、確実に株式を相続できるようにしておくことです。この相続税の納税猶予の制度は、後継者が株式を相続した場合しか利用できないからです。

ただ、このような制度がなくても、お話ししてきたように本来事業承継においては、後継者へ確実に株式を承継していただくことが大きなテーマです。株式を確実に承継していただくために、生前贈与遺言という方法を用いてきたわけです。

遺言という方法で、相続という手続きの中で株式を後継者に承継していく場合に壁となっていた相続税という問題をクリアする一つの選択肢が、今回の納税猶予制度であるということが言えると思います。

一つ付け加えると、中小企業経営承継円滑化法の中には、遺言の実効性を高めるための、民法の遺留分規定の特例制度も盛り込まれています。

このように書いてくると今回の相続税の納税猶予制度はいいことばかりに見えますが、個人的には首を傾げたくなるところもあって、ちょっと使い勝手が悪いのかな、とも感じています。(このあたりはまたの機会に書くことがあると思いますが)

それでも、事業承継を進めて行くにあたって選択肢が増えたのは歓迎すべきことでしょう。

 

代表取締役社長 小川 泰延

 


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