厳しさを増す中小企業

最近遭遇した事例

No113_104167最近、中小企業金融に関連して金融機関の姿勢をうかがわせる事例に遭遇した。厳格な事業計画に対する審査を経て、融資が決定した事業がスタートしたが、第二段階へ進み第二次融資段階へ入ったところで融資が受けられなくなってしまった例だ。

企業は何とか関係方面と協議を重ね何とかしのいだものの、血反吐が出る思いを重ねていた。

私は昭和40年代に、お客さまが当時頻繁に行われていた融通手形が相手方の不履行のために二重決済をしなければならなくなって、その資金繰りのために一夜にして頭髪が真っ白になってしまったお客さまを見ている。

長い税理士生活の中で沢山の債権者会議や倒産に立ち会ってきたが、後にも先にもその社長さんだけだ。当時のお客さまの状況を思い出してしまった。

激変する経営環境

7月アメリカFRBと財務省はインディマック・バンコープの破綻を受けたフレディーマックとファニーメイの株価の急落を受けて、公的資金を投入する救済策を発表した。

この二つの住宅公社は、アメリカ政府の住宅政策の根幹を担っている。アメリカの発行する国債4兆ドルを上回る5兆ドル(530兆円)という債券を発行しており、米国債に次ぐ信用力や流動性があり、ドル建て資産の中心に位置づけられているものである。

この株式会社とはいえ、その成り立ちから準公的機関ともいえる2住宅公社の経営危機が表面化したのである。

これを受けて日経株価も「54年ぶりの11日連続下げ」を出すなど経済環境は激変している。今まで世界経済を牽引してきたアメリカの経済がかってないダメージを受け、日本の金融機関の倒産が続出した1997年の直前の状況にあるように見える。あるいは、1929年の大恐慌の再来を予感させるものである。

貸し渋りの再来か

昨年来のサブプライム問題に端を発し、原油をはじめ諸物価が高騰し、インフレが懸念される状況になっている。また、同根のサブプライム問題が前述のごとくアメリカの経済を直撃し、景気後退が鮮明になってきた。中でもサブプライム問題は金融システムの中核を直撃しブッシュ大統領がペイオフに備えて預金保護に関する緊急声明を出す事態になっている。

わが国においてもその影響は少なくない。そのような中で県内信用金庫の決算内容が発表された。2信金のみが黒字で他は最終損益がマイナスと発表されている。現在の金融システムの中においては、信用金庫・信用組合は中小企業の最後の砦である。その決算内容はわれわれ中小企業へストレートに反映されるのである。

冒頭の例ではないが、『貸し渋り』、『貸し剥がし』の再来を恐れるのである。

中小企業はどう自衛するか

新銀行東京は石原知事が貸し渋りにあえぐ中小企業の惨状をみて、中小企業のための金融組織が必要だと感じた。その問題意識は正しかったと思っている。しかし、中小企業金融の実態を知らなさ過ぎて失敗したといわざるを得ない。

三題話ではないが、私は中小企業金融の本質は頼母子講とバングラデッシュのグラミン銀行の原点となった「グループ連帯性」にあると考えている。

「金融NPO」(藤井良広著:岩波新書)によれば、金融NPOのルーツとして頼母子講の伝統と精神をこのように紹介している。

『振り返れば、日本では中世以来、庶民の間で相互扶助の資金融通手段として頼母子講・無尽講などが活用されてきた。江戸期の両替商による商人貸し、札差による米担保貸しなどを大口借り手向けの「営利金融」と位置づけると、同期の頼母子講は、それらとは異質で、庶民が自らの資金をお互いに持ち寄り、無利子・無担保で融通し合う伝統的な「非営利金融」のシステムだった。ついでに言えば、当時の「担保金融」は質屋である。』

中小企業の近代的な非営利金融システムをどう構築するか、金融NPOの中にヒントが隠されているように思える。ちなみに、無尽講が信用組合・信用金庫と発展してきたものである。その信用金庫・信用組合が営利金融システムに組み込まれてしまい淘汰されかかっているのである。

 


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