信託法の改正…相続、事業承継の悩みに朗報

信託法の改正

No103_1330126大正 11年に制定されて以来改正されていなかった信託業法と信託法が改正された。信託業法は平成16年に改正施行され、信託法は昨年末(平成 18 年12月8日)に改正され、今年の9月30 日から施行されることになった。

私が信託法や信託業法の改正に注目するのは、この信託法の改正が中小企業の経営者の皆さんや、私たちが常日頃お手伝いしている相続のいろいろな悩みに対して非常に有効な、言い過ぎになるかもしれないが、究極の相続対策や会社法との合わせによる事業承継対策になるのではないかと思うからである。

もう 15 年以上も前になるが、一人娘の 40 歳代の女性の方からお母さんの財産に関する相談を受け、いろいろの選択肢の中からその娘さんからお母さんが認知症になっても財産の管理に困らないように後見制度によらずに、「お母さんとの契約によって財産管理ができるようにしたい」という依頼を受け、公正証書による委任契約の作成のお手伝いをしたことを思い出した。このようなことも今回の改正で何の問題もなく解決できてしまうのである。 

信託制度とは

信託という制度はイギリスが大英帝国として世界に君臨していた時代に英国から世界に広がる植民地に赴く時に、本国にある財産の管理を人に委託する制度として発達してきたもので、極めて個人的な側面を持つ制度である。

ところが現在のわが国ではその枠組みだけが金融機関に与えられて信託の持つ個人的側面はまったくないがしろにされてきたのである。信託制度(図1)は今まで我々には他人事の制度であった。古くは貸付信託・投資信託、最近は「貯蓄から投資へ」の掛け声の中で不動産や債権などの資産を流動化し金融商品を組成する証券化スキームとして使われているものでなじみが少ない制度で あった。

私が信託法に関心を持ったのは昭和 55 年ごろから相続対策の一環として信託制度を使いたいと思い信託銀行を廻り相談 したことが始まりである。当時は信託を扱うことができるのは信託銀行だけで、信託商品は総て大蔵省の認可事項になっていたために、大蔵省の認可が得られず実現できなかった。これからは、そのとき考えたスキームも自由にできる。大きな朗報である。

改正点のあらまし

今回改正された信託法、 信託業法の改正点の主要な点は次の三つである。

一つは、今まで限定的であった信託の対象になる信託可能財産が財産権一般に拡大されたことである。

二つ目は信託財産の受託者が金融機関に限られていたものが、金融機関以外にも開放されたことである。

三つ目は、信託行為の態様が拡大され、信託制度が本来持つ個人的側面を全面的に復活させたことである。すなわち、個人が個人財産を家族を受益者とする個人信託(個人信託あるいは家族信託と通称されている)が導入されたのである。No103_13301996

相続・事業承継の 悩みに朗報

今回の改正により金融機関以外の法人が信託業務をできるようになったこと、信託の持つ個人的側面を復活させたことにより、今まで相続対策、特に”争”続 対策というと 「遺言」をお勧めするか、税金を払って贈与や譲渡をして財産を相続人へ移転するということしかできなかったことが、信託を活用することにより、いままでの「相続”税”対策」的側面が強かった相続対策も相続税に関係のない家庭における「”争”続対策」 へ大きく領域が広がってきた。

また、いま社会問題になっている認知症や”振り込め詐欺”の被害から高齢者を守る切り札になる可能性がある画期的な制度ではないかと考える。典型的な個人信託である①遺言代用信託や②跡継ぎ指定信託といわれる受益者連続型信託 ( 図2 )については次号以下でその制度の概要を紹介するが、相続に頭を悩ます皆さま、さらには事業承継の中心である株式の移転や相続に伴う株式の分散防止対策にも極めて有効な制度になるものと考えている。

信託法を充分研究して皆さまの期待に大いに応えたいと思う。

税理士法人 LRパートナーズ 代表社員 小川湧三

 


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