2007年問題と税制について

2007年問題

No95_13435247いよいよ2007年問題といわれる団塊世代の定年退職が始まる。昭和22年(1947年)生まれの戦後ベビーブームの第一世代の人々である。

織田信長の時代は「人生50年」と言われたが、現代は「人生80年」の時代であり、今は60歳と言っても昔の36歳、働き盛りである。仮に七掛けと言っても42歳、終戦直後子どもであった私にとっては、当時60歳と言えば年寄り・老人のイメージが強かったが、現在既に還暦を超えていても自分では老人の感じがしない。

また、今は死語に近いが「隠居」する心境には程遠いものと誰しも感じているのが現実である。

何が問題か

05年から日本の総人口が減少する時代に入った。戦後増え続けてきた人口が減少に転じ、社会構造が根本的に変化する兆しとして未知の時代に突入する何とはなしの不安を感じているのである。

追い討ちをかけるように戦後の団塊の世代がいよいよ仕事から離れて労働力人口も減少する時代になってきた。07年問題がクローズアップされているのはこの社会的構造変化の転換点として捉えられているからである。

一つは、政府の年金政策の失敗により、年金負担世代が少子化社会によって減少し年金受給世代を支えきれなくなってきていること、もう一つは、所得格差の二極分化が進んでいることである。

所得格差の二極化

所得格差の二極分化が進んでいるとは言いながらも、団塊世代は終身雇用制の残像を背負っておりまだまだその恩恵を多分に受けている。堺屋太一氏ではないが、今後10年、団塊の世代が消費世代として輝く時代が来るという人もある。

所得格差の二極化は更に二つの側面からみることができる。
定年退職すると収入の道が途絶え、政府の年金負担が増えること、高齢化・長寿化により医療費・介護費負担が増えることで定年以後の世代の低収入・高負担がひたひたと迫っていることと併せて、所得格差の二極化の大きな問題として取り上げられているのは、現役若年世代がバブル崩壊の直撃を受け、ニート、フリーターに代表されるようにワーキングプアと称される低所得に甘んじなければならない階層が急増しているのである。

所得格差のもう一つの側面は、アメリカ型の経営に移行して、いわゆる「株式錬金術」により超高所得世代が出現してきていることである。一昨年の長者番付のトップにファンドマネジャーが躍り出たのを記憶されている方もあろう。

所得格差解消は所得税の超過累進税率で

経済のグローバル化、所得水準の向上による総中流化の時代を前提で「税率は限りなくフラット化に向かう」と何度か本欄で述べてきたが、二極分化が急激に進行するときは超・超過累進制度による所得再分配機能を活かすことも視野に入れなければならないであろう。

昨年、田原総一郎氏の講演を聞く機会があり、その中で氏は中国の首脳が日本から学びたいことの一つとして戦後日本の超長期の経済発展を挙げられていた。

戦後廃墟の中で国際復興基金等から融資を受け(外資導入)産業を復興させ所得を倍増させながら税収をそれ以上に回収し復興基金を完全に返済すると言う国際的にも優等生として卒業し先進諸国に入ったことである。

それは最高88%(事業税を入れると93%)にもなる超過累進税率と、それを執行した優秀な官僚制度にあると考えている。

これを戦後長者番付の常連であった松下幸之助氏は自分の可処分所得が所得の10%前後であったことから度々「良く働いたご褒美として国から手数料を戴く」という皮肉な表現で言い表していた。氏の無税国家論もこの辺から出てきていたのではないかと思う。

超過累進税率制度に戻るといっても現在のように1千8百万円を超えると最高税率になってしまうような急激な累進制度ではなく別表のように緩やかな、しかし、高い税率の総合累進税率制度も一つの選択肢と考えている。広範な損益通算制度を認め分離課税は極力避けたほうがより活力ある社会に向かうのではなかろうか。

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税理士法人 LRパートナーズ 代表社員 小川湧三

 


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