郵政民営化を考える

郵貯問題の根幹

図表は2001年と1990年のマクロ経済と資金の流れを表わしたものである。この10年間で金融資産の残高が民間金融機関489兆円と郵貯516兆円と逆転していること、なおかつ、純増加額が民間金融機関96兆円に対して郵貯246兆円と純増額の70%超が郵貯へシフトしている。

郵貯問題の根幹は、個人金融資産の40%を超えるものが郵貯(郵便貯金・簡易保険・年金)に集中しており、「官」にあるこの郵貯資産を自由主義経済の中での金融システムの中へどう融和的に取り入れるかにかかっている。

郵政民営化の是非

郵政民営化議論の中で民営化する理由を明らかによ、言われているが、民営化の利点は既に郵便小包をみれば誰が見ても民営化に分があることは明である。

お金の使い方にしても年金資産の運用の仕方を見れば、民間金融機関や年金資産を超える資金をお役人に任せて安心だという人は少ないのではなかろうか。

図表を見れば、郵貯等516兆円のうち370兆円は特殊法人や国債等財政投融資へ回されている。制度創設当初はそれなりに必要性があったのでろうが、個人金融資産1400兆円の40%近くが郵貯に集中している状況は異常と感じるのは当然である。公的部門に滞留している郵貯資金を市場経済に戻す意味で郵政民営化は是非進めなければならない。

見えない郵政民営化の姿

郵貯資金は全体では巨額だとはいえ、小口多数のいわゆる庶民の資金の集合体である。このことからすれば、地域にどう還流させるかが課題であろう。

主要な業務として①小口消費者金融②住宅ローン③中小・零細企業融資(主として運転資金)④処方箋に基づく金融商品販売⑤利便性を考慮したキャッシュ・サービス、公的年金口座などが考えられる。これらはリテール・バンクとして地域金融機関(地銀・信金・信用組合・農協など)とどう調和させるのであろうか。

もう一つは、巨大資金を背景に投資銀行化の道が考えられるが、これらは公的年金などの轍を踏まないようにしなければならない。官が信頼を失っている現状からすれば巨大なままにしておくことは国民の信頼を得られないであろう。「恐竜を野に放つな」である。

ヤマト運輸 v.s 郵政公社をみればこれも明らかであろう。金融システムの大きな攪乱要因にならないように郵政民営化にあたって、この巨大な資金をどう市場に戻すのか道筋が見えない。

(小川 湧三)

 


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