「空の巣」期と制度疲労

「空の巣」期現象

日本経済新聞に出ていた税制調査会に関する記事のなかに「空の巣期」についての記事があり、下図のように表にしてみた。この表は「家族周期の歴史的比較」のうち1990年現在の状況である。末子が成人してから死亡するまでの期間を「空の巣」期というのだそうである。

「空の巣」期を女性で見ると18世紀には0.3年、1920年には10.5年、1990年には32.7年である。表にして眺めてみると、1990年では「子育て」期と「空の巣」期がほぼ同じであることが判る。

制度疲労を起こしている社会

振り返ってみると、戦後の税制は終戦後の“超”超過累進税率所得税から始まって平成元年に消費税が導入されるまで直接税を中心にした超過累進税制度が税制の中心であった。

子育て期間と重なる所得稼得期は所得税、年金・保険負担、子育て教育費、住宅ローン等の支出負担が集中していたことになる。「子育て」期と「空の巣」期とが同じ期間であるということは、世代間扶養という考え方では、子育て世代は自らの家族の養育・維持と同じ期間の親世代と二世代の負担を背負わさせていることと同じことを意味する。

「子育て」期がいかに大きな負担を負っていたかが判る。今までの税制や社会制度は、この「子育て期間」に集中して負担がかかる仕組みになっており、出生率が上げる制度にはなっていなかった。

税制は勿論子育て期の最大の事業である教育制度、介護・保障、年金など老後保障システムのすべてが制度疲労を起こしているといわなければならない。

制度改革の視点

制度改革は子育て層の負担の軽減、資産形成、特に住宅の取得が促進される方向で行われるべきものと考える。

税制でいえば税率のフラット化、所得、消費、資産の税源配分均等化、子育て期間の控除の充実、所得稼得期間内の住宅取得の促進政策、「空の巣」期からの所得の逆移転などが望まれる。

介護・保障、年金などの老後システム等については、高齢者が社会的役割を果たせる社会づくりを目指すとともに、公的年金制度については人の一生の年数に係わる極めて超長期にわたる制度であるため年金数理に基づいた安定した制度が望まれる。

(小川 湧三)

 


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