消費税と企業経営
消費税率が15%に引き上げられたら
お客様からこんな質問がありました。「消費税率が15%に引き上げられたら企業の経営はどんな影響を受けるのでしょうか」。
このお客さまは非常に発想がユニークかつ新鮮で積極的な経営をしており、同業者やいろいろな方と現在の経営のあり方や、自分の意見に対する反応など社会情勢から常に5年先、10年先のことを話題にされる。奥田経団連会長の消費税率を毎年1%ずつ引き上げる提言を聞いて考えられたのだろうと思う。
気が付きにくい消費税改正案
今年の消費税改正の中にチョット気が付きにくいが大変重要だと思われる改正がさりげなく入っているのに気が付いたでしょうか。平成16年4月から「価格表示を税込み表示にしなければならない」と税込み表示を義務付ける税制改正です。
奥田提案が実現すれば、価格表示を毎年値上げしなければならなくなります。1000円の商品は1050円、1060円、1070円というように毎年値上げして表示し直さなければなりません。
この不景気に値上げできる(消費者に転嫁できる)所ばかりではありません。商店街の空洞化、衰退が問題視されている現状では、この改正は中小零細企業の経営にとって死活が懸かってくると考えています。
消費税の表示は現行どおり「税別表示」「1000円+消費税」が望ましいと考えます。良薬は口に苦し。消費税を国民の目から逸らしてはならないのではないでしょうか。
消費税率の引き上げは信用取引を縮小させる
今の日本の財政状態では消費税の引き上げは避けては通れません。いずれ10%、15%になることは覚悟しなければならないでしょう。お客さまは「そうなったらどうなるのか」というのが質問です。
今年の改正案では月額400万円以上の消費税を納税するところは今までの3ヶ月ごとの納税から毎月の納税に変わります。この毎月納税の制度が原則的な消費税の納税になる可能性が高い。
この影響は掛売り、手形取引を中心とする業種に大きな資金負担をもたらすでしょう。消費税は手形では受け取ってもらえず現金払いですから、資金繰り、運転資金の負担が大変になります。したがって、手形取引の圧縮、売掛サイトの短縮、原則現金取引「現金正価、掛け値なし」への移行が経営課題となりそうです。
価格競争に巻き込まれない経営へ
消費税の免税額が年間売上3000万円から1000万円に引き下げられます。原則全事業者消費税課税時代に入ったことになります。中小零細企業は価格の税込み表示の撤廃を求めると同時に、価格競争に巻き込まれないような経営の戦略を立ててゆかねばなりません。
資金力のある企業は信用供与を強みにできるかもしれません。売掛債権の多い会社は取引条件の改善と場合によっては業態変化を戦略の中心になりそうです。お客さまとの話はおおむね以上のようなところに落ち着きましたが、皆さまのご意見、感想があれば是非お聞かせください。
(小川 湧三)
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