羊頭狗肉の税制改革

自民党税制改正大綱

昨年末12月13日に自由民主党の税制改正大綱が発表された。税制改正の方針の決定に当たっては自由民主党の税制調査会、政府の税制調査会、学識経験者を中心とした経済財政諮問会議があり、昨年末の税制を巡る混乱は目に余るものがあった。前月号でも書いたがこの期に及んで小田原評定そのもので、改革とは程遠い税制改正が出来上がった。

税制改革の目的

税制改正大綱によれば税制改正の目的を「昭和恐慌以来70年ぶりに経験するデフレ不況に国民は苦しんでいる。

当面の課題は、まず、デフレの脱却である。」とし、「このため、市場活性化を目指した金融・証券税制の思い切った軽減・簡素化、土地の有効利用を促進する登録免許税、不動産取得税等の大幅な見直し、相続税と贈与税の一体化と軽減による貯蓄資産の流動化等の措置を講じている。

さらに、不良債権処理の一層の促進と、それに伴う雇用や経営不安に対処するため、金融機関の資金仲介機能の回復を目指し、金融秩序の再構築を税制面からも支援することとしている。」としている。

税制の基本は限りなくシンプルでフラットな税率へ

デフレ時代の税制は累進構造をもつ税制からシンプルでフラットな税制へ転換する必要がある。税源は経済活動による収益・利益であり、それを所得、消費、資産のそれぞれの段階において簡素に、比例的に課税すべきものと考える。

有価証券税制は平成元年3月までは原則非課税であった。いたずらに複雑にせずに原則非課税か、小泉首相が言うように税理士に頼まなくても良いくらいに解かりやすくすべきである。

土地税制では昭和42年頃には税率10%から段階的に引き上げた前例があり、デフレからの脱却を目指すなら0%にする位の思い切った税制改正が求められる。

羊頭狗肉の税制改革

有価証券税制は我々税理士でも理解に苦しむような複雑な制度になってしまった。不動産税制についても表面的な税率を下げたが、仔細に見れば特例廃止によって実質増税になるものがある。

相続に係る制度も、新たに設けられた相続贈与一体化を組み込んだ「累積精算課税」は一見大減税のように見える。しかし、仔細に検討すれば相続税の後送りに過ぎず、相続税負担が将来の不確定要素に大きく左右される、リスクの大きい目先の対策にすぎない。しかも孫を養子にした場合には増税にするなど、長寿社会を迎えて相続を巡る新たな社会的リスクを増幅する懸念がある。

留保金課税の廃止然り、不良債権引当の損金算入と税効果会計然り、小手先の策を弄さず政策と税制を一致させ簡素にすべきである。

今度の税制改正に期待されていたものは、高度成長からデフレ時代に変わったことを受けてデフレ・低成長時代の基本税制を確立することである。

しかし、税制改正は今までどおり継ぎはぎだらけのパッチワーク的改正に過ぎず、デフレ対策とはほど遠い増税の隠し味をちりばめた羊頭狗肉の税制改正と云わなければならない。

ましてや消費税における価格表示の義務化にいたってはなにをか言わんや、行きがけの駄賃とはこのことか。

(小川 湧三)

 


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