小田原評定

21世紀初頭は大転換の時代

2002年1月1日「新しい光を求めて」というタイトルで書いたが、株価が8300円台、地価も下げ止まらず諸々の統計も戦後の記録を更新して暮れた。

2001年には新しい台風が新たに生まれた。小渕前首相が急逝し小泉内閣が誕生したこと、9月11日の米中枢同時テロの発生したこと、中国がWTOに加入したことである。米中枢同時テロは新たな混乱の時代を予感させ、中国のWTO加入は中国の変質、すなわち、共産主義から資本主義への路線転換が定着し、中国が世界の工場化し安い労働力を武器にデフレの輸出が明確になったことである。

今年はこれらを受けて小泉政権の手腕を問われた年である。

金融システムの崩壊は政策の失敗

緊急の問題はデフレの進行を止められないでいることであり、その中核は金融システムの崩壊である。これはバブルによるものではなく、バブル崩壊の対応を誤った政策の失敗によるものである。

図を見れば明らかなように中小企業への貸し出しは97年からでさえ300兆円から210兆円強と三分の一も減少している。直接金融により資金を調達できる大企業への貸し出しがほとんど横這いであるにもかかわらず間接金融すなわち金融機関からの借り入れしか資金調達の手段を持たない中小企業への貸し出しが5年間に三分の一も減少している。

資金を必要なところへ回すことのできない金融システムの機能不全を正すことのできなかった政策に問題があると言わざるを得ない。

小田原評定で時を失う小泉政権

大転換の時代を受けて改革路線を掲げた小泉政権であるが、その手段、方向性や政権運用を見ていると隔靴掻痒の感がある。小泉政権ができてから株式時価総額が131兆円失われ、地価の下落も未だ止まらずほぼ同額の価値が失われている。

500兆円といわれるGDPも今はやりの時価会計によれば半分の250兆円そこそこでしかない。この経済非常事態を迎えて改革の実行が求められているにもかかわらずこの期に及んで方法論の議論をしている有様はあたかも小田原評定で時を失っている感がするのである。

筋違いの不良債権処理

不良債権処理は避けて通れないものであることは誰でもが認めるところである。しかし、政策の失敗である限り、有効なデフレ対策を取らないまま不良債権処理を強行すればデフレを加速させ、日本経済を破綻させかねないことは瞬間日経平均株価が8300円を割ったことでも明らかである。経済の活性化を図る景気浮揚策と慎重かつ計画的な不良債権処理が求められる。

(小川 湧三)

 


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