株式制度の改正と中小企業

株式の無額面化と自己株式取得の解禁

今年商法が改正されて10月から自己株式の取得の解禁とあわせて株式の無額面化が行なわれることになった。商法はこの10数年最低資本金制度への移行に始まり会社の分割、合併統合の手段としての株式交換、株式移転制度をはじめとして今年の株式制度の改正など改正に次ぐ改正で一昔前の商法の知識ではまったく用をなさないほど改正された。

株式の無額面化は、従来のように一株5万円(500円、50円)というように、一株当たりの株券の券面額が定められていたのに較べ、資本募集時にそのときの時価により発行価額XX円で募集をし、株券には株数のみ記載され券面額が記載されない制度になったのである。

自己株式の取得は、資本維持の原則、株価操作、インサイダー取引の防止などから従来は原則禁止であったのが、数次の改正により今年10月から自由になった。

ベンチャー企業創業について

株式の無額面化はベンチャー企業に有利に働く。上場を目指したベンチャー企業の創業は最低資本金制度と額面株式制度のもとでは高いハードルだったが、今年から無額面制度に改正されたため、いわゆるエンジェル投資家を集めやすくなり、創業しやすくなったかもしれない。しかし、株式会社の最低資本金1000万円を100万円くらいまで引き下げる必要があろう。

中小企業の成長戦略について

中小企業でもビジネスモデルがしっかりしていれば、証券市場が整備されたことに伴ない企業買収(M&A)や適切な資本政策を通じて成長のスピードをあげることが可能となった。M&Aはこの株式交換や株式移転制度によってこの成長を早めることを助けることになる。

また、逆に経営に限界を感じた経営者はM&Aによりリタイアするも良し、経営者としてより強力な経営に参加するも良し、さらには新たな事業にチャレンジするも良し、いろいろな選択肢が選べる時代になってきた。

中小企業の事業承継対策として

新しい会社制度は中小企業の事業承継をスムースに行なう手法を多様化させるであろう。

特に従来からあった社債制度、第三者割り当て増資、現物出資などの制度に新しく商法改正により加わった株式移転、株式交換、会社分割、自己株式取得・消却など、さらにはSPC法などによる不動産や債権の証券化スキームなどを活用したM&Aの手法も事業承継対策として視野にいれていかなければならない。

小川会計グループの役割

これからは会社法や法人税法が面白い時代になってきた。私たちは会社制度を十分理解し、お客さまのニーズをキャッチアップする能力を磨くと共に、これらを活用したさまざまな提案をお客さまにできるような能力を身に付けなければならない時代になってきたことを認識しなければならない。

(小川 湧三)

 


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