制度疲労

相次ぐ不祥事

ビッグモーターに始まった大企業の不祥事は業種に関係なく連続的に次々と出てきた。

損保ジャパンの不正請求の隠ぺいに加担する悪質な行為、ダイハツの車両安全不正認証問題だけではなく日野自動車・豊田自動織機でも同様なエンジン等の不正認証問題が次々と発生し、企業統治の在り方が問われている。自民党のパーティ券問題も長い慣習が見過ごされてきた結果であろう。

組織ぐるみの事件はGDP世界第2位に上り詰めた日本の官僚組織を含めて、大企業の組織文化が劣化し、社会や経済の制度疲労が起きていることを顕していると思う。

制度疲労を齎(もたら)したもの

第二次世界大戦後、日本経済は奇跡の復興を遂げ「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われ、GDP世界第2位となり世界に注目される日本になった。

しかし、ソ連崩壊によるグローバル・エコノミー化と、バブル崩壊による経済環境の変化が複合的に生じたこととアメリカで始まったIT産業の勃興に乗り遅れ、「失われた30年」が始まった。

世界経済の構造的な変革:パラダイム・シフトだとは気が付かず、総中流社会を築き上げたことにより社会的にも国民一人一人にとっても「それなりに中流」感に浸っている間に、緩やかなデフレ状態の心地よい「ゆでガエル」状態で過ぎ、気が付いた時には制度も社会も疲弊し綻びてしまい、GDPも、早くに中国に抜かれ、昨年はドイツに抜かれ4位に転落してしまった。

ハードからソフトへ

なぜ、IT革命に乗り遅れてしまったのか。

ベトナムへ何度か行っているが、1990年代の中ごろから、国際電話が衛星通信で始まり、ベトナム国内の電話や国際電話が衛星を通じて携帯電話で行われていて「日本より進んでいる」と感じたことがある。

同行の皆さんと話していた中で、日本のように、膨大な通信網を敷設するよりも一足飛びで新しいシステムに移った方が早い、というような話に落ち着いたのを記憶している。

日本は明治維新、欧米諸国に「追いつけ、追い越せ」とばかりに、鉄道、通信、銀行などあらゆるハード投資を行い、近代産業を興した。

その後、日本が第二次世界大戦の敗戦の後ドイツとともにアメリカの製造業の中心であった今のラストベルト地帯を荒廃させたように、いま、中国を筆頭にタイ、インドネシア、ベトナム、インドなどがまさに、明治維新のように日本の産業を追い付け追い越せとばかりに勢いを増して日本を追い上げてきたのである。

日本は過去の膨大なインフラ投資をはじめ長年築き上げてきた制度やシステムで、安定した社会が出来上がってしまったために、既得権益に縛られハードからソフトに転換してきた世界の変化、急速に進んできたIT技術やそれを支えるソフトパワーに適応できず、アメリカのラストベルト地帯のようになりつつある。

電信・電話や郵便制度もインターネットやスマホが普及し「公衆電話」は街角から姿を消した。

また、鉄道廃線に象徴されるように、かつて鉄道に支えられて発展してきた地方が、鉄道の廃線化とともに衰退消滅しようとしている。「失われた30年」とともに人口の減少も激しくなり、将来人口が8千万人とも、6千万人ともいわれる時代になってしまった。

新しい日本

日本は戦後の既得権益に守られてきた制度を組み直す必要がある。どうリセットするか、組み直すかは未知であるが、日本は世界のリーダーになる、なれると確信している。

地球は閉鎖社会である、と感じたのはガガーリンが宇宙から「地球は青かった」と空に浮かんだ地球を見ながら言った言葉だ。あの言葉を聞いた時に「地球は閉鎖社会」だと感じたのを今でも鮮明に覚えている。

日本は徳川時代300年間鎖国を行い閉鎖社会を平和裏に過ごしてきた。もっと遡れば縄文時代が日本列島の中で穏やかな生活であったと聞く。サミュエル・ハンチントンは「文明の衝突」で日本は八大文明のなかでも唯一単独の民族で日本文明を形作っている、と言っている。

いま、閉鎖された地球の中で民族同士の戦争が行われている。多民族間の平和を実現するには日本が培ってきた閉鎖社会での豊かで穏やかな民族経験を活かし、世界のリーダーとして日本の「和の精神」「和の心」を世界に示すことができると確信している。

 

LR小川会計グループ
代表 小川 湧三

 

 

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