第53回 ブロックチェーンゲームで小学生が月2万円稼ぐ時代が到来❺

情報セキュリティ連載
第53回 ブロックチェーンゲームで小学生が月2万円稼ぐ時代が到来❺

3 金融、ゲームにブロックチェーン技術が浸透 ②

前回は、ステーブルコインとCBDCについてお話させていただきました。今回はこのステーブルコインが個人に与える影響(選択肢)についてお話させていただきます。

★ 国家のデジタル通貨(CBDC)の発行まで引き出したステーブルコイン

仮想通貨

ナカモトサトシ(中本哲史)氏が書いたとされるビットコインについての論文は14ページほどのものですが、この論文のなかでナカモトサトシ氏はP2P間取引に起こりうる二重取引を防止をするためプルーフ・オブ・ワークという技術、その他複数の技術を組み合わせブロックチェーン技術を提唱し結果としてビットコインが誕生しました。

一部の金融関係者が「ブロックチェーン技術は素晴らしいが、ビットコインはダメだ」と書いているものを目にしますが、ビットコインについての理解不足での発言だと思います。どちらでも良いのではないかと思うかもしれませんが、おそらく上記のような発言をしている場合、ブロックチェーン技術もダメだと言うようになると思います。ビットコインの理解ができていないと、金融政策を誤った方向に向かわせてしまう可能性があります。

ビットコインの発想は「管理者を介さず個人間取引を成立させる」ことであり、その発想がブロックチェーン技術を生みだしました。

その技術に今回のテーマである価格の安定性の技術を追加したものがステーブルコインです。ではステーブルコインが誕生した経緯を見ていきましょう。ビットコインの技術として動くブロックチェーン技術は、従来の銀行口座がなくてもお金のやり取りを容易にさせたことで世界中の個人に広がりました。

しかしながら、ビットコインは2,100万枚という発行上限があることから、希少性が生まれた結果、通貨としては使いづらいものになってしまい、価格変動のない暗号資産であるステーブルコインが誕生しました。ブロックチェーン技術を基盤とする暗号資産は東南アジアやアフリカの銀行口座を持てない低所得者を中心に物凄いスピードで波及しつつ、国家が持つ通貨発行権を脅かす存在になりつつあります。そのため国家が発行するブロックチェーン基盤のデジタル通貨であるCBDCの議論にまで発展したという経緯です。

国家がCBDCの議論をし始めたのは、気づいたら古いシステムを採用しているのは国家間だけで、個人レベルでは世界中と金融のやり取りができるということになりかねないという危機感からです。

なお、2019年に米国メタ社(旧フェイスブック社)がリブラというステーブルコインの発行計画を発表しました。このリブラはバスケット型と呼ばれるドル、円、ユーロなど主要通貨に即時換金ができる発行形式をとっておりステーブルコインよりさらに通貨発行権や、金融政策に強い影響を与えるものだったため、当時の米国政府は発行を認めなかった経緯があります。

★ ステーブルコインの発達でさらなる問題も

さらにステーブルコインの存在は法定通貨の価格変動にまで影響を与える可能性が出てきています。2022年6月日銀の黒田総裁の「国民は物価高を享受している」発言が物議を呼びました。この騒動がステーブルコインが価格変動にまで影響を与える可能性のよい例となります。現状、日本で生活していると円という通貨でしか生活ができない状況です。そのため、日銀などの金融政策も対外国や国内企業の状況を主に判断して講じる反面その反動を被るのは最終的には日本国民になります。

日銀のゼロ金利政策の影響、さらにはウクライナ情勢もあり6月のドル円相場は5〜6円の円安となり、物価の高騰を招きました。

では、国民の多くがステーブルコインを所有できるようになったらどうでしょう。現行の金融システムは誰もが容易に換金することは難しいですがステーブルコインは容易に行えます。黒田発言で円の下落に耐えられず国民の多くが日本円を売却しドルを持ってしまったら、円のさらなる暴落が起きます。そうなってしまうと従来の金融政策が効かなくなる事態すら生じかねません。このように、ステーブルコインは国の通貨発行権すら崩しかねない存在になりつつあります。

★ 米国、欧州では共生するための制度づくりを開始

通貨発行権や金融政策に大きく影響を与える可能性のあるステーブルコインの認識をしている米国ではステーブルコイン法案が大詰めを迎えています(また、欧州でも基本的にはステーブルコインの発行を認める動きをしています)。

法案の内容は管理団体を限定し、資産の安全性を保全できる基準を持たせるもので、基本の基準をクリアすればステーブルコインを発行することを許可するものです。

肯定的な制度を取るのは、根本的にはステーブルコインの崩壊で金融が不安定になることを防止するものですが、規制しても技術的に規制が変えられないこと、通貨発行権等も揺るがすステーブルコインの誕生により、現状の金融インフラがブロックチェーン基盤の金融インフラに変わってしまうことを認識しているからのようです。

冒頭でお話しました「ビットコインの理解ができていないと、金融政策を誤った方向に向かわせてしまう可能性」があるというのは、ビットコインなど暗号資産の規制をしても、ブロックチェーン技術は「管理者を介さず個人間取引を成立させる」技術であり、そもそも政府が関わらないでお金のやり取りがどこでもできる仕組みであることを理解できていないということです。規制自体が意味をなさないのです。

今回はステーブルコインが国家や個人に与える影響についてお話をさせていただきました。次回は金融面で地位を確立しつつあるブロックチェーン技術が他の分野(NFTやWeb3.0)に影響を与えているお話をさせていただきます。

《参考文献》2022年8月2日、3日、4日、5日、9日、10日付 日本経済新聞

※ 本記事に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも記事の内容として記載したものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。

 

 

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