第48回 インターネットエクスプローラーのサポート終了の影響

情報セキュリティ連載
第48回 インターネットエクスプローラーのサポート終了の影響

前号では、Windowsパソコンに搭載されているWebブラウザ「インターネットエクスプローラー(以下IE)」のサポートが2022年6月16日で終了され、それ以降、IEが起動しなくなるため、IEを使用されている企業や個人ユーザーはそれまでに別のブラウザへ移行する必要がある事を書かせていただきました。今回はIEの終了による各金融機関への影響についてお話します。

1 問題はインターネットバンキング使用時の電子証明

Windowsパソコンでインターネットバンキングを使用するほとんどの場合において、電子証明という電子ファイルをパソコンにインストールしそれをIEで認証することで特定のユーザーとして認識され電子取引を可能にしています。

このIEで電子証明を認識するシステムが「アクティブX」です。このアクティブXはIEのみにしか搭載されておらず、後継の標準ブラウザである「エッジ(Edge)」には搭載されません。

そのため、電子証明方式を採用したインターネットバンキングは使えなくなってしまうという大きな問題を抱えています。

2 アクティブX問題の対応は各金融期間でバラバラ

このアクティブXが使用出来ない問題につき、アクティブXに変わる電子証明認証システムの提供を開始する機関(三井住友銀行、足利銀行等)、標準ブラウザではないファイヤーフォックスの機能で電子証明システムの機能を使用する機関(三菱UFJ銀行)など金融機関によって対応が分かれています。

3 信用金庫の対応状況

その対応が分かれる中で一番問題を抱えてるいるのが信用金庫の対応だと思われます。

信用金庫が使用するインターネットバンキングシステムはしんきん情報システムセンターが開発する「しんきん法人インターネットバンキングシステム」というシステムを使用しておりこのシステムもIEのアクティブXを利用するタイプです。

しんきん情報システムセンターはエッジの拡張機能である「IEモード」を使用しています。

4 IEモードとは

しんきん情報システムセンターが採用するエッジの拡張機能であるIEモードとはブラウザに機能を追加する拡張機能です。

このIEモードを実行すると、実質IEそのものがバックグラウンドで動き、結果としてIEのアクティブXも使えるようになります。

そのため、しんきん情報システムセンターでは、ユーザーに、エッジのこのIEモードを導入してもらい、IEが起動しなくなる問題を回避しようとしているようです。

5 IEモードの問題点

IEモードにより電子証明の認証はとれるので、問題解決になっているように見えますが、このIEモードにも2点問題を抱えています。

★ IEモードの起動操作が複雑

1つ目はエッジでIEモードを起動する際操作が複雑ということです。このIEモードの利用時に、30日間起動までの省略を可能にすることはできますが、30日を超えてしまうと再度操作し直す必要があります。

★ IEモードも2029年にサポート終了

2つ目はこのIEモードも2029年でサポートが終了してしまいます。

マイクロソフト社はこの「IEモード」を2029年までしかサポートしないと表明しており、2029年までに別の手段を探さなければなりません。

まとめ

上記のように、各金融機関で対応状況が異なり、インターネットバンキング利用者によっては利用する金融機関ごとに設定が必要になり、複雑で利用しにくい環境になってしまいます。

スマートフォンで送金処理が困難の場合など、どうしてもパソコンでインターネットバンキングを使用するケースについては、2022年6月16日までに利用している金融機関のIE終了後の対応について必ず確認することをお勧めいたします。

《参考文献》
『IEサポート終了迫る 対応遅いのは銀行と役所 どうする「脱IE」(上)』2021年11月9日付 日本経済新聞

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