予防的殺処分

宮崎県で発生した口蹄疫

10月コロナ関連のテレビを見ていたとき10年前に宮崎県で発生した口蹄疫の発生により牛を全頭殺処分したという。口蹄疫対策検証委員会設置に関する文書によれば、次のように書かれている。


口蹄疫対策検証委員会の設置について(趣旨)

会長

平成22年4月20日以降、宮崎県で発生した口蹄疫は、同県川南町を中心とする地域において、爆発的に感染が拡大するとともに、埋却地の確保が遅れたこと等により、家畜伝染病予防法(略)に基づく殺処分、移動制限等の措置のみでは蔓延防止を図ることが困難となり、我が国の家畜史上最大規模の約29万頭の家畜が殺処分されるに至った。

…略…

これらの家畜について、口蹄疫対策特別措置法(略)に基づき予防的殺処分を行うこととなった。


予防的殺処分

『歴史は「べき乗則」で動く』(マーク・ブキャナン)という本があるが、裏表紙の紹介によると「混沌たる世界を支配する究極の物理法則「べき乗則」。それは砂山の雪崩、絶滅などの自然現象だけでなく、株価変動や流行といった社会現象にさえ見出せる」とある。いろいろある事件や自然災害や現象を統計的にみると、その多くが「べき乗則」により説明ができると書かれている。

宮崎県の牛の口蹄疫についても報告書に書かれているようにべき乗則に則ったように「爆発的に感染が拡大」したために、口蹄疫の感染にワクチンや移動制限などの対策では対処しきれなくなって、感染可能性のある地域にいる牛の全部を「予防的殺処分」という形でウイルスに感染した牛だけに限らず、感染の可能性のある牛、感染していない無感染の牛についても感染の有無の判別ができないために予防的に「全頭殺処分」の決断をした。

感染症の怖さ

感染症の怖さは、感染のスピードと感染力の強さ、致死率の高さにあることは武漢はじめ世界各地で流行しているコロナの感染状況や死亡者数などを見れば明らかである。

指数関数的な感染爆発と発症前感染という目に見えない感染力が特徴で、パンデミック宣言が出されたコロナも、もし、人間以外の動物であれば「予防的殺処分」の判断が下されてもおかしくはないものである。

しかし、「人・ヒト」ではそういうわけにはいかないのである。

宮崎県の口蹄疫のように、感染症に対する対策が遅れれば「予防的殺処分」という措置が取られたように、国境閉鎖、都市閉鎖などウイルスの移動を抑えるために、保菌者たる「人」の移動を徹底的に制限しウイルスを封じ込める作戦がとられる。

この点で、学校閉鎖や緊急事態宣言を出し、国民の移動制限をしたことは賢明な措置であったと言わなければならない。

平時の体制で非常時対応

菅首相は所信表明演説の冒頭、コロナ禍に触れ「爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守り抜きます。そのうえで、社会経済活動を再開して、経済を回復してまいります。今後、冬の季節性インフルエンザ流行期に備え、地域の医療機関で1日平均20万件の検査能力を確保します」とその決意を表明した。

その決意表明は歓迎するが、〝地域の医療機関でPCR検査一日20万件?〟これで本気なの?という感じである。

パンデミック宣言が出されているコロナは、「予防的殺処分」に代わる国境封鎖、都市封鎖をしなければならないような感染症である。コロナ感染の恐怖に対峙するには、「予防的殺処分」に代ってコロナを〝全滅〟あるいは〝ゼロ〟にする決意と対策が欲しい。

それには県民、都民、全国民を1カ月で検査、隔離し、軽症者の治療をするくらいの準備をすべきだと思う。現在、コロナ発病者が出たらモグラ叩きのようにクラスター対策をやっているが、準備万端怠りなく『コロナよ、早く姿を表わせ』と、コロナを迎え撃ち、コロナゼロ宣言を出せる体制を作ってほしい。

報道によると「中国の青島市は10月12日新型コロナの発症者6人を確認したと発表。…全市民対象に5日以内にPCR検査を行うと発表。13日朝までに300万人余りの検体を採集した」と報じている。

政府は非常事態に対して、国民の善意の行動に頼った平時の体制で対処しているかのようで、危機感がまったく伝わってこないのである。

※ 2020年11月5日香川県で鳥インフルエンザが発生し、33万羽の鶏の予防的殺処分を行うと発表された。

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三
 

お問い合わせ

神奈川県川崎市で税理士・社会保険労務士をお探しなら

LR小川会計グループ

経営者のパートナーとして中小企業の皆さまをサポートします



予防的殺処分” に対して1件のコメントがあります。

コメントは受け付けていません。