空き家問題とリスクマネジメント


クローバー通信 No.182

空き家の件数が年々増え、問題となっています。

地方だけの問題ではなく、東京など大都市部では件数も多く、決して他人事ではありません。

倒壊や衛生管理上の問題だけではなく、防犯上の観点からも近隣への影響は大きく、トラブルにもなりかねません。また大きな災害がニュースになる中、何もせずほったらかしで置いておけば、災害時に大きな損害を与える可能性もあります。

今回は空き家問題と、リスクマネジメントとしての活用の可能性について考えていきましょう。

1 空き家の現状

国土交通省「空き家の現状-推移と種類別内訳」より抜粋

「住宅・土地統計調査」(総務省:令和元年9月30日公表)によれば、空き家の総数は、この20年で1.5倍(576万戸 → 849万戸)に増加。

○空き家の種類別の内訳では、「賃貸用又は売却用の住宅」(461万戸)等を除いた、「その他の住宅」がこの20年で1.9倍(182万戸 → 349万戸)に増加。

○なお、「その他の住宅」(347万戸)のうち、「一戸建(木造)」(240万戸)が最も多い。持ち家ストックに占める割合はH30年度9.4%となっている。その傾向は特に地方で 増加傾向にある。

市区町村別にみると、最も空き家数が多いのは東京都世田谷区の49,000戸、2位は大田区で、東京23区や県庁所在地が上位になっています。主要都市ほど深刻化していて、特に戸建て・集合住宅が多く、高齢者が多いエリアで件数が多くなっています。

2 空き家のリスク

空き家になってしまったら?

❶ 管理に手間がかかる
❷ 地方ほど売却が進まない
❸ 不動産業者が扱いたがらない
❹ 共有で相続した場合、主張が異なり処分が進まない

もし空き家を放置したら?

❶ 老朽化のスピードが早い
❷ 害虫や害獣による被害
❸ 倒壊・不審火などの可能性
❹ 資産価値の減少(近隣物件を含む)

空家等対策の推進に関する特別措置法 

管理が適切に行われず問題があるとされた空き家を【特定空家】に指定し、所有者に対して指導や状況の改善を促す事ができます。

•倒壊など著しく保安上危険となる
•著しく衛生上有害となる恐れがある
•著しく景観を損ねている
•周辺の生活環境に影響を及ぼす 等

特定空家に認定された場合、固定資産税の特例措置が受けられなくなり、これまで減額(1/6・1/3)されていた固定資産税が6倍・3倍かかります。
ほっとタイムス2020年2月号参照

3 売却する場合

相続した空き家の売却に関しては、一定の要件を満たせば売却する際に、譲渡所得から以下の控除を受けることができます。

3,000万円の特別控除 

2023年12月31日までの時限措置

[特例を受けるための要件]

自宅

(すべて満たす必要あり)

◦相続・遺贈により取得した空き家である
◦亡くなるまで、被相続人が1人で居住していた
◦昭和56年5月31日以前に建てられた戸建てである
◦相続発生から3年経過後の12月31日までに売却した
◦売却代金が1億円以下である
◦第三者に対して売却した(近い親族ではない事)
◦相続から譲渡までに、事業・貸付・居住していない

相続税額取得費加算

相続により取得した土地、建物などを、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる。

[特例を受けるための要件]

◦相続や遺贈により財産を取得した
◦その財産を取得した人に相続税が課税されている
◦その財産を、相続発生から相続税の申告期限の翌日以後3年経過するまでに 譲渡している

4 空き家の管理

空き家を管理すべき理由

❶ 不動産としての資産価値を維持できる
❷ 近隣とのトラブルを事前に回避できる
❸ 損害賠償を負う危険を回避できる

空き家の維持コスト

❶ 固定資産税
❷ 火災保険料
❸ 光熱費・水道料金
❹ 管理費・積立金
❺ 庭木剪定費用

空き家だと、新規に火災保険に入ることはできない場合や、補償の対象外である場合があります。

既存の保険の内容を必ず確認しましょう。

誰が管理するか?

★ 自分でする

近隣との関係を良好に保つことが大切です。特に遠方の場合は緊急時の連絡先を伝えましょう。

★ 管理会社

空き家を管理する管理会社もあります。1回100円で見回りを依頼するプランや、月額数千円からメンテナンスを請け負うプランなどもあります。

もし相続放棄すると空き家はどうなる?

相続放棄した場合、相続放棄した相続人には固定資産税の支払い義務はありません。ただし相続人全員が相続放棄した場合には、相続放棄した相続人にも遺産の「管理義務」があり、次の相続財産の管理人が決定するまで、相続放棄しても不動産の管理責任は残ります。

5 空き家の活用 と リスクマネジメント

◆ 退避場所としての活用

自然災害のリスクが高まる中、退避場所として維持する選択肢もあります。自宅と離れた場所に暮らせる場を持つ事は、リスクマネジメントにもなります。

◆ 移住・セカンドハウス

リモートワークの活用が進むと、必ずしも現在の場所に暮らす必要がなくなるかもしれません。

主たる住居として暮らし、必要に応じて会社の近くにセカンドハウスを持つという選択もあるのでは?

◆ 空き家バンクの利用

すぐに活用または売却しない場合。賃貸する選択肢もあります。全国の地方自治体が空き家対策には力を入れており、空き家バンクを活用した移住希望者への売却や賃貸などをすすめています。HPなどで物件情報を確認することができます。

まとめ

空き家の取得理由は、相続が過半数を占めています。少子化が進む中、2030年には4戸に1戸は空き家になるという予測もあります。空き家を取得した場合には、利用する事が可能か?近隣に頼れる人(管理会社)がいるか?を踏まえて、どのように活用するか、または3年以内に売却するか、早めに判断し対応する必要があります。

近隣との関係を保ち、何よりほったらかしにしない事です。

空き家になる可能性がある場合、前もって様々な対策を取る事もできます。可能であれば元気なうちに家族間で話し合っておくと良いですね。

 

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