消費税増税

10月1日

会長

今日から消費税が増税になる。6月に安倍首相が「増税延期せず」を明言するまでは消費税延期説が飛び交い、直前に萩生田官房副長官の消費税増税延期を示唆する発言が出たりして、延期説がくすぶっていた。

私自身もそうであるが、消費税増税延期を密かに期待していただけに「しょうがないね」という感想で、増税という税制改正に気乗りがしないことこの上もない。

こんな調子であったから消費税増税にかかる改正ついてお客さまへの周知、販売にあたって店頭でどうすべきか、売り上げ時の記帳指導、仕入れた時の記帳指導、キャッシュレス対策、ポイントカード対策、レジの準備対策などの指導や広報についてできずじまいで、お客さまに誠に申し訳ないと思う次第である。

消費税増税とMMT

2016年6月、安倍首相がその年9月から実施予定であった消費税増税を延期してから、我が国の財政赤字の巨大さを心配してか、「財政赤字は心配ない」という論調のベーシック・インカム論、ヘリコプター・マネー論、シムズ理論など、増税延期を援護射撃するような理論が出てきていたが、いつの間にか関心が薄れてしまったように見えた。

ところが今年の年初からアメリカで次期大統領選が激しくなるにつれて政策の根幹となる財政政策をめぐってMMT(現代金融理論)が浮上してきた。

日本が現在行っている財政・金融政策がそのMMTの実践モデルであると紹介されていたので、日本でも関心か高まった。それで7月にその主唱者であるステファニー・ケルトンニューヨーク州立大学教授が来日して講演会が開催されたのを機にMMT(現代金融理論)に関する著書、論文、ニュース記事が百花繚乱のごとき感を呈している。

MMTの主張は「自国通貨を発行している政府は財政赤字に関係なく財政破綻することはない」ということであり、大きな特徴は二つあって、その一つは税金は財政支出の財源ではなく政策誘導するためのものである。二つ目は国債は政府の貨幣発行権に包含され、金利調整作用のためにその存在意義がある、としている。

MMTの理論によれば財政赤字を補填する目的の消費税は経済を委縮させるものとして景気が低迷している現在ではとるべき政策ではないとしているので、来日のタイミングが少しずれた感じがするのである。

軽減税率は悪人を作る

私は消費税の増税はやむを得ないものと考えている。

しかし、軽減税率は単に混乱を招くばかりではない。意識的、無意識的に消費者も、商品、サービスを提供する事業者も8%の軽減税率を使って納税額を軽減したいと考えるに違いない。

たとえば、テイク・イン、テイク・アウトの価格を同じにする事業者では消費者にとっては同じ価格であるため、事業者がどちらを選択してレジを打っても支払金額に変わりがないのでおのずと軽減税率を適用する誘惑に駆られる可能性がある。

また、テイク・イン、テイク・アウトの価格を変える場合には、事業者ではなく購入者・消費者にとって購入金額が少ないほうが良いに決まっているので、店内消費をするにもかかわらず、購入時に持ち帰りとしながら店内消費をする、あるいは、事業者が売り上げを伸ばそうと意識的に値引き感覚で、店内売り上げを持ち帰り売り上げで処理をすることもありうるのである。

消費税は毎日の買い物に直結しているので、生活の知恵では済まされない事業者・消費者の行動を引き起こす大きな動機になってしまう。税務調査もまたおのずと厳しくならざるを得ず、政府と国民の離反を引き起こしてしまうのではなかろうか。

軽減税率の廃止を

「軽減税率、税務署員にも困難?」。これは日経ヴェリタス:9月8日号のコラムの見出しである。地方消費税を入れた三種類の税区分の煩雑さや、レジ・領収書・請求書への区分記載、一連の記帳・集計作業などの煩雑さを紹介している。
軽減税率の導入は低所得者層に対する増税の影響を軽減することが主たる目的だと承知しているが、軽減税率では富裕層にも適用されるのである。

富裕層に適用される軽減税率は高級品・高価格帯の商品・サービスが多いと想定され、低所得層救済の効果を減殺させてしまう。経済的弱者対策としてならば軽減税率ではなく、増税相当額を補助・増額する制度がはるかに合理的である。

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三

  

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