2000万円

金融庁の報告書問題

代表社員 小川湧三

「老後資金2000万円必要」とした金融庁の報告書が「存在しなくなる」という前代未聞の珍事が起きた。お陰様で老後の貯蓄やライフスタイルにまで広く国民の関心が高まり、われわれファイナンシャルプランナーにとっても老後のライフプランについて日が当たったのはありがたいことだと感じている。麻生大臣に感謝しなければならない。

老後の生活費をどう考えるか

私は常々云っているように、働けなくなったら、働いていたときに貯蓄していたお金に働いて貰わなければならない。年金もあるが、利子・配当・不動産収入などで老後の生活が過ごせるようにすべきだと考えている。人生100年時代、就業期間40年間として25歳から65才まで労働すると、65歳から100歳までの35年間が労働によらない収入で生活を支えなければならない期間となる。

日常生活だけを見れば25歳から55歳までの30年の積立が65歳を過ぎてから95歳までの生活費であり、55歳から65歳までの積立は病気や介護などの不時の出費に充てるものと単純化してみると、金利「ゼロ」の今では、今日の積み立てが40年後の今日の生活費になる勘定である。

ふつうは、積立も年齢が若いうちは少額であり年齢が進むにつれて収入も上がり積立額が多くなるのが通例である。こう考えると、今デフレ脱却が叫ばれているが、「ゼロ金利」の世界ではデフレでなければ老後の安心が得られないという奇妙な結論になってしまう。

2000万円貯めるには

2000万円貯めるには、「金利ゼロ」とすると単純に2000万円を40年で割ると1年間に50万円、1カ月に4万2千円ずつ積み立てる必要がある。

ところが金利が付き、複利で運用ができるとすると次のようになる。

たとえば、5%の金利で毎月積み立て40年間運用して2000万円にするには毎月1万3千円でよく、2万8千円も少なくて済むのである。運用金利0%~10%の時の積立額を下表にした。

なぜマイナス金利?

こう見てみると「ゼロ金利」の異常性が際立っているように思えるが皆さんはどうお感じであろうか。
なぜ、マイナス金利か?副島隆彦氏は今年4月に出版した「絶望の金融市場」にその理由を書いているので紹介しよう(同書p.141以下)。

「日本国債は〝マイナス金利〟である。政策金利(短期金利)は0・01%で〝ゼロ金利〟である。日銀黒田は日本国債を外国からの攻勢から守るためにはマイナス金利のほうがいい、と決断している」

「日銀の黒田東彦総裁は誰と闘っているか。カイル・バスという債券先物市場の売り崩しを狙っている男との戦いをやっている」

黒田総裁は、「日本国債を暴落させられてたまるものか」と、自ら日本の国債市場を〝マイナス利回り〟という、恐るべき冷え冷えとした、焼け野が原にする戦略(焦土作戦)を実行してカイル・バスたちに立ち向かい闘っている。だから10年物日本国債は「マイナス金利」なのである。

積立目標額

程遠い正常化

もし、ゼロ金利の経緯が前述の通りだとすれば日本銀行の金融政策には選択の余地はほとんど残されていない。米中貿易戦争によるアメリカ経済の減速懸念による、FRBの利下げへの動きに対して日本銀行は対応すべくもない。ひそかに囁かれているように、財政破綻やハイパーインフレを覚悟しなければならないかもしれない。

以前にも書いたが、金利ゼロの世界は国民の金融資産、特に預貯金は不良資産と化してしまった、といっても過言ではないのである。年金制度は積立型に変えるべきであるし、国民の資産形成については外国に見られるように政府が率先して国民の資産形成用の貯蓄商品を国民に提供するのが社会福祉政策の最初にやるべき政策である。



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代表社員 小川 湧三

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