高齢者の財産管理② 成年後見制度

クローバー通信 No.153成年後見制度

医療などの進歩により高齢化が進む日本において、成年後見制度の利用者は、最高裁判所事務総局家庭局の集計によると2016年には約3万5千件の申立てがあり、利用者数は20万人を超え、今後も増加傾向にあります。

今回は成年後見制度を見ていきましょう。

1 成年後見制度とは?

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などで判断能力が低下している人が不利益を受けないよう、家庭裁判所に申請してその人を保護または支援してくれる人(成年後見人)を付ける制度です。

本人の判断力が衰える前に利用できる「任意後見制度」と判断力が衰えた後に利用する「法定後見制度」があり、自分一人では困難な預貯金や不動産などの財産管理や各種契約が安心して行えるようになるという制度です。

例えば、認知症の高齢者が悪徳な訪問販売者から必要のない高額商品を買ってしまったとしても、成年後見人がついていればその契約を無効にすることができます。

2 任意後見制度

まだ判断能力が十分ある時に、あらかじめ自分を支援してくれる人(任意後見人)を自ら指定しておき、その人にどこまで支援してもらうか、内容を決めておくことができます。

この場合は公正証書を作成する必要があり、公証役場に行くかあるいは公証人に出張してもらう必要があります。

その後、実際に判断能力の低下が見られ後見開始となった際は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、本人が指定した任意後見人がきちんと後見人の仕事をしているかチェックします。

3 法定後見制度

既に判断能力が低下している(認知症など)場合に行い、判断能力の程度によって「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれています。

家庭裁判所に申請し、家庭裁判所に後見人を選んでもらうことで制度が利用でき、家庭裁判所が必要だと判断した場合は、法定後見監督人も選任されます。

費用は申立て・登記手数料が3,400円~、加えて申請書類の取得費用、制度利用後に成年後見人より請求があった場合は、家庭裁判所の判断により報酬の支払いが必要となります。

ただし、一度法定後見制度を始めると、本人の判断能力が回復するか本人が死亡するまで制度の利用をやめる事はできません。申請する時は周りの人とよく話し合って、計画的に行いましょう。

手続きの流れ

1 家庭裁判所への申立て
2 家庭裁判所の調査官による事実の調査
3 精神鑑定(必要な場合)  ※ 申立て件数の約10%が該当
4 審判
5 審判の告知と通知  裁判所より審判書謄本受理
6 法定後見開始  法務局に登記

※1~6まで 4カ月以内

成年後見人の仕事

法定後見人は、本人の財産を管理したり、契約などの法律行為を本人に代わって行います。また、1年ごとに財産の用途などの記録をつけ、裁判所に報告する義務があります。

財産管理

○ 現金・預貯金・不動産などの管理
○ 収入・支出の管理
○ 有価証券など金融商品の管理
○ 税務処理(確定申告・納税)

身上監護

○ 医療に関する契約
○ 施設への入所契約
○ 介護に関する契約
○ 生活、療養看護に関する契約

法定後見制度一覧表
成年後見人には誰がなる?

資格がない

○ 未成年者 ○ 破産者
○ 本人と訴訟関係にある者とその家族
○ 家庭裁判所に解任された法定代理人

親族などで認められない場合

○ 借金がある(住宅ローン以外)
○ 親族間で紛争がある
○ 遠隔地に住んでいる
○ 年齢が70歳以上
○ 本人が一定額以上の財産を保有 (預貯金1,000万円以上)など

適当な親族がいない場合

司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門家が後見人になります。
本人の資産より報酬を支払う必要があります。(1カ月2~3万円程度)


後見制度支援信託

本人が日常生活で使用する分を除いて、金銭を信託銀行などに信託することで後見人による本人の財産の横領を防ぐ制度です。家庭裁判所が必要だと判断した場合に専門職の後見人が選任され、家庭裁判所の指示書に基づき、契約・変更・解約などの手続きが行われます。その為、後見人が勝手に払い戻しや解約する事ができず、後見人による本人の財産の使い込みを防ぎます。

○ 信託財産は元本が保証され、預金保護制度の対象となる
○ 金銭に限られ不動産などは対象外
○ 多くの信託銀行での取扱は最低1,000万円からの利用


まとめ

残念ながら成年後見制度をめぐるトラブルでは親族による財産の使い込みや、家庭裁判所により選任された後見人(弁護士など)の対応への不満などが多く挙げられます。

また、法定成年後見制度を利用する事により、一定の職業につけなくなる・会社の役員になれない・相続税対策としての贈与や生命保険契約等ができないなどのデメリットもあります。

思わぬトラブルを避ける為にも、家族間でコミュニケーションをとり、情報を共有し、早めにできる対策を実行していきましょう。

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