日本は無借金国家に?

会長バブルの物語

ジョン・K・ガルブレイスは「バブルの物語」の冒頭にバブルに共通する要因としていくつかをあげている。
①暴落の前に金融の天才がいる
②輪をかけた「テコ」の再発見
③何か新奇らしく見えるもの
④真実はほとんど無視される
と四つのサブタイトルをつけて解説している。

6月1日安倍総理が消費税増税再延期を表明してからヘリコプターマネーを巡る議論や日本銀行が国債を全部買ってしまえば日本は実質的に無借金になる、というような意見が学者のなかから出ていて、日本の国債は何も心配することはないという論説も見受けるのである。

日本は無借金国家になる?

日本の国債を全部日本銀行が買えば日本の借金は「ゼロ」になるという趣旨のことを森永卓郎氏は「日本は間もなく無借金に」と題するコラムで論じていた。理屈は政府と日本銀行の勘定を連結するというもの。コラムの記事を引用する。

「いま、日銀は年間に100兆円を超えるペースで国債を買い続けている。あと、4~5年で日銀はすべての国債を買い切ってしまうだろう。そこで、政府が発行するすべての国債を日銀が保有するようになった状態を考えよう。政府は、日銀が保有する国債に利払いしなければならないが、日銀は余剰金を政府に納めることになっているので、政府が払った利息は政府に戻ってくる。だから日銀が国債を買ってくれる限り、国債をいくら発行しても、財政的には問題は生じない」

このコラムのサブタイトルに「消費税は増税どころか引き下げの余地あり」とあり、もしこれが現実的に実現可能なものなら、消費税の増税どころか日本はやがて「無税国家」にできるかもしれませんね?!

暴落の前に天才がいる

消費税増税延期に関連して藤井聡氏が書いた「国民所得を80万円増やす経済政策」を読んだ。氏は安倍総理に消費税に再延長を進言したブレーンである。

氏は「増税延期と同時に年間10~20兆円規模の徹底的な財政政策を展開して「デフレ完全脱却」を果たし、それを通じて「600兆円経済=国民所得80万円増」を実現するとともに「財政健全化」を果たし、それ以降は持続的な財政と成長を目指していく」というビジョンを提案している。

しかし、この政策実行の結果については「日銀がしっかりしていれば「国債暴落Xデー」がきても、最後はメリットさえうまれる」(149P)と書いている。

時の政権のブレーンを務める人たちが国債の暴落や政策の責任を「日本銀行がしっかりすれば…」と日本銀行へ責任を転嫁するようなことや、日本国債の暴落が起こっても「どれだけ大量の人が国債を売り飛ばそうと、それをすべて日銀が買い取れば、国債の価格には何の変動も起きないのである」と言っている。藤井氏や森永氏はガルブレイスのいう暴落の前の天才のように見えるのである。

ヘリコプターマネー

6月1日増税再延期以降新しい経済理論が出てきたのは「ヘリコプターマネー」である。ヘリコプターマネーは前々号でも紹介したように財政政策と金融政策を一体化し、お金をヘリコプターからばら撒くように貨幣を国民に直接配る政策である。

このような議論が浮上してきたのハイパーインフレの悪夢は、一つは、日本銀行の「量的・質的金融緩和の拡大」(QQE2)により日本銀行が買い取れる国債が来年5月までに枯渇してしまうのではないかという計算上のタイムリミットが見込まれること、二つ目は消費税の増税がなくなれば不足する政府の支出を補う国債を発行してもマイナス金利下において誰が国債を購入するのかという懸念があるからであろう。

藤井氏の著書を読んでも、ヘリコプターマネーに関する資料を読んでも行きつく先はデフォルト(債務不履行)をしない限りハイパーインフレしか待っていないようである。

ドイツのハイパーインフレの時は「男七人がベルリンで豪遊しても、アメリカの1ドル紙幣を使いきれなかった」「ベルリンで5ドル札を崩そうとしても、誰もその額に匹敵するマルクを持っていなかった」という話が別掲の本に紹介されていたがこのようなことがないことを祈るのみである。

 

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三


神奈川県川崎市で税理士・社会保険労務士をお探しなら

LR小川会計グループ

経営者のパートナーとして中小企業の皆さまをサポートします


お問い合わせ


 

日本は無借金国家に?” に対して1件のコメントがあります。

コメントは受け付けていません。