ヘリコプターマネー

会長増税再延期

6月1日安倍首相は来年4月に予定されていた消費税増税の実施を2年半延期し平成31年10月まで再延期することを表明した。

一昨年の11月消費税の増税を延期した時から、増税の時期の前年にある参議院議員選挙前後の景気がどうなるか、平成29年4月の消費税増税時期の前後の景気はどうなるか。本当に増税できるのか懸念していたことが現実に起きてしまった。

首相の増税再延期表明に続き、参議院議員選挙の後行われるであろう補正予算措置や日本銀行の追加緩和策などの政策対応を巡って、新聞・TVやいろいろな評論の中にどっと出てきたのが「ヘリコプターマネー」論である。

ヘリコプターマネー

ヘリコプターマネーとは「飛行するヘリコプターから現金をばら撒くように、政府や中央銀行が大量の貨幣を市中に供給する政策」を総称している。アメリカのミルトン・フリードマンがデフレから脱却するための政策として提唱したのが始まりといわれている。

このような政策論がなぜ今出てきたのであろうか。

消費税増税再延期によって危機的ともいえる日本の財政状況の回避が出来なくなったこと、政府は「二兎を追う政策」と称して経済成長によってデフレを脱却し財政状況を改善する政策をとっているが、学者の研究によれば国家債務のGDP比率が90%を超えると債務の負担に耐え切れず脱出速度に達せず失速するといっている。

首相談話を受けて格付機関は既に日本の財政を「安定的」から「ネガティブ」に下げた。今後の補正予算の規模や政策対応を見て更なる格下げが起きてもおかしくはない。

日本銀行も平成25年黒田総裁就任直後に第一弾の異次元の金融緩和(QQE)、平成26年11月末に第二弾として消費税増税催促の奇襲緩和(QQE2)第三弾として今年1月29日にマイナス金利の導入と金融緩和を続けてきたがデフレ脱却宣言には至らず、国債の保有高は国債発行額の三分の一を超え、日本銀行の国債買入れの限界説も出ている。

首相談話のあと三菱UFJ銀行の国債特別資格返上に見られるように、マイナス金利実施後機関投資家の国債からの逃避も顕著になってきた。

このような現状から政府や日本銀行が成長政策をとるための財政資金の財源をどこに求めるか、政策手段の選択肢が極めて限られているところから、ヘリコプターマネー論が出てきているように思われる。

新たな局面に入った

6月1日の首相の増税再延期表明によって財政破綻懸念に対する「アクセルギア」が入ったと感じている。

連日のようにマイナス金利更新や円高のニュースが流れ、政府・中央銀行の政策対応が限定的と思われるところから、その象徴がヘリコプターマネー政策やむなしとして取り上げられているものと思う。

ヘリコプターマネー政策にはどんな政策があるのだろうか。いくつか提案されているが①公共事業の財源として財政投融資債を発行する②政府紙幣を発行する③ゼロ金利の償還期限がない永久債を発行する④日銀が保有する国債を政府からの預け金等として債務から外すなどが提案されている。

現在行っている日本銀行の国債買取政策が国債買取の余裕がなくなっており、機関投資家がマイナス金利の余波を受けて国債離れを起こしている現在、社会保障費や成長戦略の実現のための日本政府の財政需要をどのように調達するのか。もはや税収で賄うのは誰の目にも不可能であることは明らかである。ヘリコプターマネー政策をとらざるを得ない状況が、消費税増税再延期で明らかになったのである。

前門の虎後門の狼

急速に進む「マイナス金利」や為替レートの急速な円高への振れは地震の後に起きる大津波の前の引き潮を想起させ(稲村ヶ崎の故事)国債暴落のようなハードランニングやドイツ型のハイパーインフレなど具体的なシナリオなどを想定しておく必要がある。①ヘリコプターマネーによるインフレ②入札未達によるマイナス金利からの反転と国債暴落③BIS規制による国債の格付けに引き下げによる国債の暴落などが考えられる。

ヘリコプターマネー、入札未達など国内事情を〝前門の虎〟とすれば国際金融監督機関が「国債であっても格付けに応じたリスクを評価する」ように方針転換が行われており、日本国債の格付け引き下げは〝後門の狼〟と云えよう。

 

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三


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