高額役員報酬について

新聞の記事から

7月の半ば、平成 26 年 3月期の上場会社の役員で1億円以上の役員報酬 を得ていた人たちの記事が出ていた。

平成 26 年3月期の最高額は 12 億9200万円であり、昨年3月期では9 億9500万円である。 しかし、欧米の経営者の報酬から比べればはるかに少ない。

昨年9月「日経ビジネス」では上場会社の高額役員報酬の特集を組んでいた。記事のスタンスは次のように高額報酬に否定的な記事であったと記憶している。

①経営手腕がなくても 高額報酬
②誰もトップに物申せない
③外国人厚遇の二重基準
④外面重視の報酬返上
⑤大赤字でも巨額退職慰労金
などなどで ある。

高額報酬の開示は平成22 年3月 31 日の内閣府令 「企業内容等の開示に関する内閣府令の改正」により役員報酬の総額の開示と役員報酬1億円以上の個別開示が行われるよ うになった。役員報酬には役員退職金、役員賞与、 基本報酬、ストックオプ ションのほかに連結会社 からの報酬も含まれる。

高額報酬を歓迎する

高額役員報酬はカルロ ス・ゴーン氏がニッサン の経営再建に当たったと きに、氏の役員報酬が日本的にはあまりにも高額だったため話題を呼び高額役員報酬をクローズ アップさせるきっかけに なったと記憶している。

今回もゴーン氏は基本報酬では最高だそうである。しかし、ゴーン氏に云わせれば日本の役員報酬は低すぎ欧米ではこの数倍はふつうであるとのことである。報道による と創業 10 年未満の会社で も 11 社で 18人が1億円以上の役員報酬を受け取った、とのことである。

経営者はどんどん思い切って高額の報酬や賞与や退職金を受け取れるような社会風土になった方が良いと思っている。その方が起業するマインド を呼び起こし社会を活性化し、良い会社にするインセンティブも働くと考える。

会社は「現金製造機」

資本主義社会では資本を効果的に利用して事業 を行う仕組みとして株式会社制度が発明された。 株式会社制度と株式を中心とした証券市場は資本主義のインフラである。

ピーター・リンチの言葉ではないが「会社は キャッシュマシーン」「お金の製造工場」という表現は会社制度の本質をついていると思うのである。経営と資本が分離された株式会社では経営者は株主の代理人として株式価値最大化を目指して経営にあたる。その報酬 として高額の役員報酬を受けるのである。

資本と経営が分離していなくとも、経営者は株式会社を通じて経済的に豊かになることを目指し、中小企業経営者は中産階級の中核をなすのである。

妬みの税制から脱却を

日本では高額役員報酬を受け取れる税制にはなっていない。役員報酬 は業績に連動して受け取ることが望ましいと思う。

しかし、日本の税制は 〝恣意性を排除する〞〝租税回避行為の防止〞との趣旨で業績と連動させることを嫌い、利益処分行為として法人税と個人所得税の二重の課税をして きた。

これが高額役員報酬を日本に根付かせなかった理由で、役員賞与損金不算入制度、高額役員報酬 損金不算入制度、高額役員退職金損金不算入制度などが挙げられる。

前号で取り上げたよう に法人税率の引き下げが グローバルで進行してい る現在では、日本も世界の潮流に逆らえずアベノ ミクスの成長戦略の一つとして法人税率の引き下げが決まった。低税率の法人税制度の環境下で は、法人の所得を留保するインセンティブが働く ことになる。

このようななかで個人所得税として納税を選択することは税率の高い個人所得税を支払うことを 選択することであり国に とっては税収が上がるのである。最終的には個人に還元されるべきものであるから、そろそろ大手を振って高額報酬を受け取れるように妬みの税制からの脱却を図って欲しいものである。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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