企業課税の在り方

なにかがおかしい?

成長戦略の目玉の一つ として法人税率を5年を目途にドイツ並みの20 % 台への引き下げが決まっ た。我が国企業の国際競争力の強化を目指すということで大変喜ばしいこ とである。

しかし、この引き下げによる税収の減収を補う代替財源を見つけることの条件が付いていることに違和感を覚えるものである。

そもそも、法人税率を下げるのは法人税額 を少なくして内部留保を厚くし企業の国際競争力をつけること、デフレ下で停滞している経済を活力あるものにして税源のパイを広げ成長の配当と して全体の税収を増やそ うとすることが政策の目的であるはずだからである。

しかるに、それに代わる代替財源を同じ懐の企業税制の中に求めて課税ベースを拡大して税収を確保するということ は、本来の企業の国際競争力をつけようとする目的とは相反することにな る。

代替財源探しは 中小企業を圧迫する

中小企業は企業数の99 %、雇用者数の 70 %を占め、国民生活の基盤をなすものである。この中小企業の殆どはグローバ ル化の波に乗り海外へ目を向けるどころか、デフ レで閉塞感漂う国内市場 の中で消耗戦を強いられてきた。

このような中で税率引き下げの代替財源 として外形標準課税、減価償却制度の見直し、欠損金繰越控除の見直し、受取配当金の益金不算入の見直しなど企業税制の中に求めることは、海外にマーケットを持てない中小企業への課税を強化することになり、大企業への減税を中小企業が肩 代わりするという、おかしなことと思う。

これでは、アベノミクスは成長戦略の中で「中小企業が活動しやすく個人の可能性が最大限発揮される社会を目指す」こととしていることにも反する。

企業課税制度は成長戦略の要

代替財源を求めることは、我が国の最重要課題 が「財政再建」であることから当然といえる。

しかし、財政再建の前提条 件として「デフレ脱却」が必須である以上、「デフレ脱却→経済成長」を優先させることであって、経済の成長エンジン である企業活動の中に代替財源を求めるのは税率引き下げというアクセルとブレーキを同時に踏むことと同じで「二兎を追うもの一兎をも得ず」となりかねない。

アベノミクスは「デフ レ脱却→経済成長」を目指して第一の矢、第二の矢を放ち取り敢えず成功 した。次の第三の矢である成長戦略がこれから始まろうとしており、企業 課税の中に代替財源を求めることは、本丸の成長戦略がぶれてしまうことになる。

成長戦略においては代替財源探しは企業税制以外のところから求めるべきものと考える。平成 25 年度は法人税1・ 6兆円、地方税1・2兆 円の税収増があった。こ の勢いを更に加速させ、止めることのないようにすべきである。

代替財源は 法人税以外に

「財政再建」は

①財政支出を削減する
②増税する
③経済成長により税収 を増やす

の三つの組み合わせによる。アベノミク スは成長による基礎固め をし、その上で増税、支出削減による国民へのしわ寄せを極力少なくする ことと理解している。したがって、成長戦略の中核となる企業税制を無にするような代替財源探しは避けなければならない。

私はグローバル時代の税制として「新ふるさと納税制度」(「ほっとタイムス」第152号)の提案の中で法人税のフラッ ト化、国籍主義の採用、個人課税の強化、住民税の納税地の指定を提案した。企業も個人もグローバル社会に適応すべく積極的に海外へ進出できるようにし、代替財源は所得税、消費税を中心にすべきと考えている。

法人税率引き下げから覗えるのは、グローバル企業と日本国内から出られないローカル企業に対する税制を含めた諸制度を二元化する必要があるのではないか、ということである。中小法人は個人企業の課税される個人所得税と法人税の選択ができるアメリカのような 「Sコーポレーション」 制度も検討すべきかもし れない。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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