アベノミクス・成長戦略を凝視しよう

アベノミクスは 一応成功

安倍政権が発足して1 年がたった。昨年の1月号にはアベノミクスが走り出したことをうけて、 3本の矢のうち成長戦略がアベノミクス成功のカギを握ると考えて、「平成の渋沢栄一、出でよ」 というタイトルで書かせ ていただいた。どのような成長戦略を期待するか書いたものである。

安倍政権の経済政策の一丁目一番地が「財政再建とデフレ脱却」であり、その中心が持続可能な経済成長を達成するための成長戦略である。その基本となる産業競争力強化法が成立して安倍政権の成長戦略が動きだす。年末にはアベノミクスへの仮評価が出たが第一、二の矢はほぼ成功と評価しているものの短期的な効果しか期待されておらず、第三の矢である持続可能な成長戦略については総 じて厳しい評価をしている。

デフレはしぶとい

デフレについては、志賀櫻氏の著書『日銀発金融危機』では「経済を、政策によって長期的にコントロールできるというのは幻想に過ぎない。経済は、供給サイドのイノベーションがあって新機軸の財・サービスの供給によって需要が喚起される。

こういう経路によってのみ経済は長期的に成長する。政策による需要の喚起には短期的な効果しかなく、持続性はない」と述べていて、成長戦略には供給サイドのイノベーションを引き起こすインパクトが秘められているかどうかが問われることになる。

1995年以後にシリ コンバレーに誕生したIT企業 10 社の時価総額は100兆円に達したと いわれている。

一方トヨタやメガバンクで構成する日本の上位10 社の時価総額は 90 兆円に届かない。アメリカではわずか 20 年足らずで、 日本の大企業に匹敵する 新産業が立ち上がっているのである。

このようなイノベーションを引き起こした大きな理由の一つはリスクマネーの厚みにあるといわれている。

起業は揺り籠から

マイクロソフトにしろフェイスブックにしろガレージから立ち上がってきた。アマゾンにして も何年も開発投資が続き赤字が続いた。赤字でも資金があれば続くのである。アメリカでは辛抱強くリスクマネーを集める仕組み、出させる仕組みが出来上がっているのである。

翻って日本を見るとお金を出す仕組み、出させる仕組みもできていないし、出しても報われないのである。起業はガレージから始まるのが普通であって、新しい成長戦略はここから日の目を当ててほしいものである。

会社法は平成 17 年に大改正されて大企業モデルから、資本金1円、一人株主の会社から会社の成長に合わせて経営管理形態が変えられる起業型の会社法に変わった。

しかし、起業型会社に対応する草の根投資のようなリスクマネーを活性化させるようなシステムはまだ十分には整備されてはいない。

民間投資を喚起する成長戦略に〝草の根投資〞が報われる制度を

草の根投資が報われるものにするには、会社法の活用と、草の根投資をしても報われるように 「妬みの税制」と言われる税制を変える必要がある。

ガレージ起業のお金は親子、兄弟、同僚、学友がポケットマネーを出し合って起業するところから始まり、まとまった資金が必要になるのは、 このようなガレージ企業から企業化のめどがつき、一歩踏み出す創業期である。しかもこの創業期は 5年に 30 %しか生き残れない厳しい時代でもある。

この段階からの創業投資には他の所得と通算し創業投資リスクの痛みを軽減する制度が定着することが望ましい。

会社法の無議決権株式、種類株式制度と組み合わせれば、このような企業の揺籃期の段階から起業者に資金を提供するシステムができるのではなかろうかと考えている。民間投資を喚起する成長戦略として、このような草の根投資が報われるような政策が取られるよう凝視している。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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