災害の予想と避難対策

南海トラフ地震被害予想発表

8月 30 日「南海トラフ地震」被害予想が発表され、最大 32 万人の死者の予想が発表された。発表前の災害予想の想定死者が4〜5万人だったのに比べると比較にならない人数である。

これは、今までの被害想定に対する考え方が3・11 以後、大きく変わってきたからである。 3・11東日本大地震は、地震による物的被害はもとより、津波による人命被害が「想定外」「千年に一度」の自然災害であった。加えて、原子力発電所の事故対応の拙さから人災と言われる放射能汚染という原子力災害を誘発してしまった。

この教訓を受けて、以前から言われていた南海トラフ地震の被害予想が根本的に見直されたものが、30 日に発表された「南海トラフ地震」の被害予想である。

併せて「3・11東日本大地震」において被害が少なかったところ、被害が激しかったところさまざまな検証が行われ、「想定に捉われるな」「最善を尽くせ」「率先避難者たれ」 「避難ルートを確認・確保せよ」等が、防災対策の基本対策として提案されている。

経済災害の可能性

野田総理は民主党のマニフェストにない「消費税増税」に政治生命を懸けるといって「消費税増税法案」を今国会で通した。野田首相は民主党が政権を取ってから財務副大臣、財務大臣を経て総理大臣に就任した。

その間、日本の財政の厳しさを国際会議や財務省の官僚から叩き込まれて、マニフェストとは関係なく首相就任と同時に消費税増税を政策の最優先課題としたのである。今年の四月「文芸春秋五月号」に「日本がギリシャ化する日:新日本の自殺」と題して、野田総理が消費税増税を断念した時のシナリオが掲載された。

内容は政局の難しさから消費税増税を断念し、その記者会見を機に国債の格付けが下がり、国債の暴落が始まるシナリオである。幸い、消費税増税法案は紆余曲折を経て無事国会を通過し成立したので、シナリオの通りにはならず安堵したところである。

この記事をどう受け止めるかは各人一人ひとりの考え方であるが、日本を代表する月刊誌の記事であることと、終戦直後のハイパーインフレや預金封鎖、新円切替えを経験し、財産税による資産家の没落を見ている一人として身につまされて読んだ。

危機は突然やってくる

3・11東日本大震災は東南海地震や関東大地震のように発生が予想すらされていなかった。起きてから過去1000年前の大地震である貞観地震があったことが取り上げられた。

自然災害は可能性は判っていても、それが「何時、何処で」「どの程度の規模で」起きるのかは誰もわからない。起きてしまえば地震で数10秒、津波で数10分で瓦礫の山が築かれてしまうのである。経済災害も数時間、数日の間に世界を一変させる。いつ、どこで、どの程度で、何が引き金になって起きるかわからないが『起きる』のである。(※1)

経済災害からの避難対策

自然災害は広域であるとはいえ、人命もあるが被害は物理的な被害が中心で、被害を受けない地域が圧倒的に多く復興支援の基地となることがで きる。

しかし、経済災害は全国一律に及び、全国民が被害者であり、国民一人ひとりがどのようにして被害を最小限にするか自己責任で考え行動しなければならないのである。自然災害以上の経済災害はいつ起きてもおかしくないと心ある多くの識者も憂慮している(※2)(※3)。

自然災害における災害対策は、経済災害にもそのまま適用できるものである。私たちは想定に捉われず避難ルートを確かめておかなければならない。経済災害に対する避難対策も自然災害に対する避難対策と同じで、避難ルートを確保し、率先避難し災害から逃れた人々が災害の復興を担う人々となるのである。

(※1)エンドゲーム:国家債務危機の警告と対策(プレジデント社) 「危機がいつやってくるか見極める方法がない(108)」 「日本における大規模な負債危機と通貨危機は、起こるかどうかではなく、いつ起こるかという問題だ(281)」

(※2)雑誌「選択」2011・3月号 p3 ( 吉野直行氏 )

(※3)文芸春秋 22 年5月号「あと四年、財政と年金は同時に破綻する」

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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