経営者の高額報酬、開示の是非

高額報酬開示

経営者の報酬が開示され、日産のカルロス・ゴーン社長8億9千万円、ソニーのハワード・ストリンガー社長8億1千万円と発表され話題となっている。

これは、2010年 3月期の有価証券報告書から、年に1億円以上の報酬(基本報酬・ストックオプション・賞与・退職金の合計)を支払っている役員(取締役・監査役・執行役)について個別に情報を開示することが義務付けられて開示することとなったからある。

役員報酬の公表については賛否いろいろ議論が盛んであるが、私は会社の株主に任せるべきで法律や権限で強制することは、後段で述べる経営者の創業へのインセンティ ブを阻害するので反対である。

日本の経営者の報酬は低すぎる

CEOの報酬の高さについては、アメリカでも話題となっている。最高額はAIGのトップ5人の報酬金額が9170万 ドル(約1兆円)であった。

リーマンショックの後、公的資金を投入するにあたり企業のCEOの報酬の高額さに反発する議会や、オバマ政権から大幅な削減命令が出されたことで 記憶に新しいところである。

ここで明らかになったことは、グローバル社会に入った今、社会風土の違いとはいえ、世界と比較すると日本の経営者の報酬があまりにも隔絶して低いということである。

背景は高額納税者公示制度

別表は平成 21年度の所得税の予算ベースの所得税の課税状況表であるが、この表を見ると課税所得900万円超(給与換算1430万円)の納税者が97万人、納税者人口に占める上位納税者の割合が2・1%の人が所得税の 40 ・2%を負担しているのである。

課税所得 900万円超というのが 「思いのほか低い?」と思うのである。5千万円、1億円超の納税者が2%になってもおかしくない社会になっても良いと思う。これは、今は廃止されたが、戦後から長く続いた高額納税者公示制度が大きく影響していると思っている。

創業型社会へ向かうには創業者のインセンティブが必要

EUの欧州委員会が実施した世論調査によると、 望ましい就業形態として「サラリーマンより自営業者」と答えた〝将来起業したい日本人〞の割合は 39 % に止まって社会保障の手厚い北欧諸国を除くと最下位だと発表し、国際的に見た起業意欲の低さは中長期的な日本経済の活力低下を招くと指摘している。

先月号でも触れたが、活力ある創業型社会へ向かうには、その他、税制に限ってみただけでもまだまだ見直すべきことが多い。その一つが、高額報酬の否認規定である。

中小企業の社長はハッピー・リタイアメントを考えるとき、役員退職金を受けるとき、高額すぎて税務署から否認されるのでは ないかとびくびくしながら受け取っているのが実情である。また、自ら自主規制してしまって、欲しい金額ももらわずにいる場合もある。

資本主義社会における価値創造の担い手として尊敬されるには、成功した経営者は、それに相応しい報酬をうけることが創業型社会への大きなインセンティブとなると考えており、税務においても会社の自主的な決定を尊重し、他社に比較して等、業績に照らし、高額だからといって否認することのないことを望むものである。

【平成21年度推計値】

税率区分 課税所得 所得税額(兆円) 課税所得(兆円) 納税者数(万人)
5.10%  ~330 21.8% 2.6 45.5% 48.4 81.0% 3785 20.23%
~900 38.0% 4.6 37.3% 39.7 16.9% 790 33.40%
900~ 40.2% 4.8 17.2% 18.3 2.1% 97    12.0  106.3  4672

 

LRパートナーズ代表社員 小川 湧三

 


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