納税者番号制度

納税者番号制度

1月 22 日財務副大臣が税・社会保障の共通番号制度に関する法案を秋にも出したいと報道されていた。また、政府税制調査会は税と社会保障制度に関する「納税者番号制度」の検討を行う三つのプロジェクト・チーム

①「番号制度を含めた納税環境整備」
②「市民が担う公益活動を資金面で支援する寄付税制」
③「所得税の扶養控除廃止などで影響を受ける医療・福祉分野の制度の見直し」

の設置を決めた、と 1月 29 日の新聞で報道していた。納税者番号制度はこれまで何度も議論されてきたが、実施できないでいるものである。

極限にきている情報管理

なぜ、納税者番号は警戒さ れるのだろうか。それは納税者番号をすべての取引・経済的行動に使うことによって納税者の所得を捕捉しようとしているからである。

コンピュータの発達によって情報はすさまじく発達し、物流におけるトレサビリティ、BSE騒動から食物に関するトレサビリティな ど「使う側」からすれば極めて便利であることは誰でもが認めるところであろう。

しかし、番号を「使われる側」とすれば、自分に識別コードや非接触住基カードの携行が義務付けられて、Suicaの通過ゲートのように、計測地点のあるあらゆるところでキャッチされることを考える と「ぞっ」とする。

そのなんと もいえない不安感が今までの納税者番号制度の反対理由の根底にあるのではなかろう か。

組織の不条理性

あらゆる組織は不条理を内在している。たとえ、個人としての良心に反しても組織の目的・意思決定に従わなければならない不条理さを内包していることである。この不条理さが判っているために、憲法では団体・結社の自由という形で個人の加入脱退の自由も保証し、思想・良心の自由、検閲の禁止などを定めているのである。

組織の目的にあっているかどうかは、組織が決めることであって、組織の構成員が決めることではない。ただ、「情報を握るものは権力を握る」 「権力を握るものは情報を選択的に利用する」といわれるように、国家が情報を握ると国民は国家から逃げることはできないし、国民は国家を選択することができないのである。

さらに納税者番号制度の背後にある不安感は、情報を扱う国家と国民の間の情報格差とでもいおうか情報の非対称性がある。 国家に自分の個人情報がどれだけ集積されているか、情報をどのように使われるか判らない「自分の知らない自分の情報」が蓄積されていく恐怖感とも言うべきものを感じるのである。

優れている日本の戸籍制度

日本人はすでに生まれたと きから個人識別コードを付けられている。率直に言えば「戸籍制度」である。氏名、生年月日、父母、出生、結婚、死亡、本籍地など全国民が全国統一して登録されている。しかしながら、この制度に不安を抱いている日本人は無いといっても過言ではないであろう。

なぜなら、しっかりと登録されていても、これは自分の存在証明として「自分が必要とするときに使う」制度と 理解しているからである。一元的な納税者番号制度を設け取引をトレースしなければならないような制度ではなく、事務管理に必要な限度で、国民が安心して受け入れられる制度を望むものである。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


神奈川県川崎市で税理士をお探しなら

LR小川会計グループ

経営者のパートナーとして中小企業の皆さまをサポートします


お問い合わせ