景気は底入れ?「中小企業は、いま」

政府の景気底入れ宣言?

No125_170312与謝野経財相は6月2日「1 ~3月が景気の底だった」と底打ちを示唆し、以後日銀も景気の下げ止まりを発表している。 確かに昨年9月15 日のリーマン・ブラザーズの破綻に端を発した釣瓶落としのような 急激な景気の失速は、世界中の政府・中央銀行の対策によって下げ止った感がある。しかし、われわれ中小企業にとってはとても底入れ感は感じられないのである。

景気の二つの見方

景気を判断する時に二つの見方がある。ひとつは風向きが変わるタイミングで見るものであり、図で言えば上から下へ向かう転換点(A)、あるいは、下から上へ向かう(B)で ある。もう一つは平均ラインより上か下かにより判断するものである。すなわち図で言えば、平均ラインを下から上へ抜ける点(C)であり、上から下へ抜ける点(D)である。

No125_177213今回の底入れ宣言は、日本の景気はこの(B)点を折り返したと判断したのである。僅かな期間に三回の補正予算を組み、21 年度の予算を成立させた政府としては、選挙を控えて何とかして明るいニュースを届けたい気持ちが痛いほど出ているコメントではある。どちらが優れているかは分からないが、私は現状のポジ ションを平均線を基準としてプラス(+)、マイナス(-)で表示する方式が庶民感覚に合っているのではないかと思う。

中小企業の試練の時期

政府は底入れ宣言をしたが、本当に底入れしたのであろうか。リーマンショックによる『百年に一度』の世界同時不況に対する応急措置が一応効を奏した、というのが現状であって、今回はサブプライム以後緩やかに下がってきた景気動向が、リーマンショックで断崖から深い谷底へ転げ落ちた感がある。全世界を挙げての応急措置が効いて、墜落している途中でパラシュートが開いてほっと したが未だ着地点の見通しが立たない状態ではなかろうか。

中小企業の景気は、業種の如何を問わず受注環境は非常に厳しいものになっている。失業率、有効求人倍率はともに悪化しているし、7月 15 日の日本経済新聞の「中小企業経営者調査」によれば、この先の景気見通しについて「悪化」又は 「悪化の兆しがある」と答えた企業が 41 %に達し、「改善」又は「改善の兆しがある」と答えた企業の 29 %を大きく上回っているのである。

私の周りの中小企業でも中小企業緊急雇用安定助成金を受ける企業が激増しているのである。中小企業にとって、もう一つ無視できないことがある。それは、昨年来政府が中小企業対策として打ち出した緊急融資について効果が消え始めていることである。融資は受けたものの、業績は一向に回復の兆しが見えず緊急融資による経営資金も枯渇し始めていることである。痛み止めのモルヒネが切れたときのような痛みが中小企業を襲ってくるのではなかろうか。

おかしい中小企業金融政策

県内信用金庫の決算内容が 6月 24 日発表されていた。信金・信組は中小企業の最期の砦である。信金・信組は金融危機以来合併の繰り返しで広域化、規模の拡大化に向かってきた。この動きは中小企業の立場から見ると地域金融機関として身近にあった信金・信組が段々遠く離れていく、都市銀行化していくように見える。中小企業はもっと身近にある金融機関を求めているのである。

今度の不況は世界総需要が「どーん」と 10 %以上地盤が陥没した直下型地震に遭遇したようなものであり、その余震が続いているのである。地震がそうであるように、今回のような大きな衝撃に耐えられる中小企業は少ないし、このような毀損した中小企業へ融資しようとする金融機関はないと考えるのが普通である。

いま中小企業に必要なのは資金を融資を受けることではなく、融資の返済を猶予し中小企業から資金の流出を止めることである。これは金融機関に対し自主的に行わせるのではなく、政策として一律に実施すべきである。

返済猶予は阪神淡路大地震の際にも実施されたと聞いているし、7月 19 日テレビで国民新党の亀井代表代行が政策提言として触れていた。 「ほっとタイムス」の1月号でも提案したが、折しも総選挙でもあり、中小企業政策の一環として各候補者へ訴えていただきたいと思う。

LRパートナーズ代表社員 小川  湧三

 


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