中国興黒胴化為

ブラックホールと化した中国

青海・威海を訪ねて

No104_155138249月 21日から3連休を利用してアジア進出指導研究会(ABA)の一員として、山東省威海市人民政府の招待による威海工業団地の視察に青海・ 威海へ行ってきた。

チンタオ(青海)は 93 年以来 14 年ぶりになる。当時、中国での開発は北京で始まったばかりで、青海はまだ手付かずのままで、住民も人民服姿の人たちを多く見かけたも のであった。

今回訪問した時はどこの都市かと見紛うほど、外見は近代都市と化していた。山東省威海市は黄海を挟んで韓国と向かい合っており、海路でも十数時間で往来できる距離にある。そのため韓国企業の進出が圧倒的に多く、宿泊したホテルにも韓国館という韓国料理専門店があった。

威海工業団地の概要

威海工業団地は 04年に計画され、 05年に中国人民政府の認可をうけて始 まった国家プロジェクトによる工業団地で、威海市が開発資金を出資して開発した。開発面積は 92 平方キロメートルで、この面積は我が高津区、宮前区、中原区、多摩区、麻生区いわゆる川崎市北部の全面積( 94・01 平方キロメートル)に匹敵する広さである。

このうち第一期工事 52 平方キロメートル(高津区、宮前区、中原区の面積に相当する)については、威海市 が直接、出資・開発しただけあって既に完成し、計画立案から僅か2年足らずでインフラを整備してしまうスピードには、さすが共産独裁国家の面目躍如たるものがある。

開発が終わり、工場の誘致活動が始まったばかりであったが、訪問したときは約 90 社の誘致が確定し、工場の建設が始まったところであった。最終誘致目標は約1200社、人口20万人を目標とし、誘致対象も高度技術、先端技術を持つ企業に絞り、投資額も最低1億元以上の企業を対象としているとのことであった。

研修生派遣会社の見学

今回の視察で、偶然ではあったが、中国から研修生を派遣している会社を見学することができた。3年から 10 年以上の就労経験を有する技術・技能保有者に、日本で技能・技術者として就労させるため、日本語を教育 していた。日本で言う「外国人の研修・技術実習制度」の研修生派遣元である。

10 月3日の日本経済新聞によれば、経団連がこの研修制度を、現在の3年の期間から、2年の延長とその後3年の就労ビザ(通算8年の滞在が可能になる)を出すように提言しているという。

この視察で感じ、考えたこと
”ブラック・ホールと化した中国”

デフレ不況下の 01年から始まった大企業の第3次中国進出ブームによって、産業が空洞化し、息の根を絶たれて倒産廃業に追い込まれた多くの中小企業、その一方で、大企業の雇用調整の影響を受け、技術者のいなく なった日本に向けて、日本語の特訓を受けた技術者・技能者たちが中国から「輸出」される。この現実を目の当たりに見て、私たちはどう考えたらよいのであろうか。

青島・威海視察のあと、9月 28 日の新聞に「民間給与9年連続ダウン」と国税庁の実態統計が発表された。各種統計が示す景気回復の影響が給与には及んでいないことを伝えるものである。この記事を見て、ある故事を思い出した。

安政の昔、ある村人が稲村ヶ崎の岬に立ってみると、はるか遠く潮が引いているのが見えた。大津波がくるのを予見した彼は、稲村に火をつけて、村人を津波の被害から救った、というものだ。

グローバリズムの名のもとに大企業は労働力の安さを求めて中国へ中国へとなびき、国内の産業を空洞化させ、労働者を失業させ、技術者を失職させてしまった。そのあとに、中国で技術を身に付けた技術者たちが安い労働力で日本の企業へ働きにやって来るのである。

海水が引いてしまった後に来る大津波の予兆を想像してしまった。中国の労働力、技術力に頼らざるをえない状況になってしまっている日本の現状をいやおうなく再確認させられた今回の訪問であった。ブラッ ク・ホールと化した中国が「千と千尋の神隠し」 に出てくる、あらゆる物を飲み込んで大きく膨れ上がっていく「かおな し」のイメージとダブって見えてきた。

中国へは 92 年以来ほぼ毎年行っているが、こんな感情に襲われたのは今回がはじめてであった。

税理士法人 LRパートナーズ  代表社員 小川湧三

 


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