年金支給認定基準の不透明感

混乱を増幅させる? 「確からしい」?

再度、年金問題について

No101_16115467年金データ5095万件不明問題については前回(100号)にも述べたが、「年金確認委員会」が発足し、年金支給基準が発表されたので再び取り上げてみたい。

政府は早速データ未統合問題を解消すべく、年金給付を審査する「年金記録確認中央第三者委員会 (年金確認委員会)」を発足させた。この「年金確認委員会」が年金確認の基準を発表したが、報道で見る限り、いくつかの問題点がある。

それは、不突合データの照合や確認のための手順が示されなかったことである。年金確認委員会が 15 件の認定を発表した。国民の権利を回復することは大切であり、これ自体を否定するものではないが、不透明感は拭えない。問題のデータは、199 0年のコンピュータ化、1997年の国民年金番号統一、2002年の保険料徴収義務移管などの制度の変更を契機にして発生したとされている。未統合年金データの形態は

①コンピュータデータ化したが、統合できないデータ

②未入力のデータ
③記録が廃棄されたデータ
④原簿そのものの不備
⑤職員が横領し記録が改ざ んあるいは作成されなかっ たデータ

の五種類のデータに分けることができる。

年金認定委員会の 何が問題か

5095万件以外にもある膨大な未統合データ の何をどれと対応させたのであろうか。未入力データの中にあったのだろうか、更には、廃棄した記録の中にあると推定されたのだろうか、認定するに当たって、どのデータと対応させたのか明らかにさせないと、いま作業が始まった統合作業を更に複雑にし、未統合データを増加させることになる。

未統合データのうち① コンピュータ化によるデータには氏名の不突合、生年月日の不突合、地名の不突合等がある。コンピュータの初期のころはカタカナ表記のものや、漢字になってもコンピュータ用の簡略化された漢字などのために不突合になっているものが多いといわれている。これについては公表し国民が未統合データの中に自分のデータが無いかどうか調査できるようにすべきである。

国民自ら調査ができるように

政府はいま、国民に申請させて、社会保険庁の職員が調査し、年金支給認定委員会で認定することになっているが、国民にとってはブラックボックスの中の未統合データが見えな い限り回答に対して信頼をすることはできない。統合された年金データを全員に通知し、国民全員に自分の年金データを確認する手段を与えることである。

次いでコンピュー タ化によるものなどは、国民が自ら自分の年金データがどのようになっているか調査できるように、調査事務に慣れた社会保険労務士、税理士、公認会計士、弁護士、行政書士、ファイ ナンシャル・プランナーなど一定の資格を有するものに調査の代理権限を与えて民間の活力を活用することである。

あわせて、社会保険庁職員に協力義務を課すことにより比較的短期間に解決すると考える。個人情報保護法に抵触する場合や調査費用などについては、特別立法等によることが必要であろう。

年金問題の本質は官僚制度と予算制度

年金問題の本質は官僚(公務員)制度の問題である。年金制度が始まったこ ろから、その目線は国民に無く国民に名を借りた官僚たちの己の利益を守り育て拡大するための制度であったことが良くわかる(文芸春秋2007年8 月号)。さらに官製談合や 天下りをみればその感を深くするものは私だけではないと思う。

もう一つ、官僚の言い訳は「法律は国会で、それを忠実に執行するのが私たちなので、責任は国会にあり我々には無い」というこ とが非常に多い。確かに形式として予算は国会で決められたものであり、これに反することはできない制度になっている。責任を負えない官僚が如何に立法、立案に係わっているかが問題なのである。

もう一つ、予算制度を根本から変えると思われる 「公会計制度改革」のテス トが静かに始まっている。ここでは、その公会計制度改革を提唱している桜内文城新潟大学助教授の 「公会計革命」(講談社現 代新書)を紹介するに止めるが、平成 21 年から実施予定で実施手順、会計基準などの準備が始まった。

この動きによって今後、国や地方自治体、その傘下にある各種の事業体などについて、企業会計に準じた制度によって財産や債務の状態を明らかにすると共に、企業会計と異なる予算の政策効果についても、政策決定過程における多様な選択肢をシミュレーションできる画期的な公会計制度改革が進むことを期待している。

弊社では企画開発室にパブリックアカウンティング部門(PA担当)を設け、公会計制度改革の積極的支援をしていくことを決め、現在準備を進めているとこ ろである。

税理士法人 LRパートナーズ 代表社員 小川湧三

 


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