税制は社会を変える

税制改正が始まった

恒例の税制改正が始まった。税制改正は毎年あるが今年の税制改正は長く続いたデフレから漸く脱却しようといている何とはなしの明るさを帳消しにするような増税路線が衣の下に見え隠れする。

さらに、新会社法により会社の設立が容易になり起業がしやすくなったと思ったら、これに水をかけるような税制改正(特定会社の給与所得控除の見直し)も含まれていたりしている。

しかし、発表された改正案の中に「所得税の税率を10%-37%の4段階から5-40%の6段階に変更。「個人住民税の税率は10%に一本化」というものがある。今回はこの所得税の税率の改正をちょっと異なった視点から取り上げてみたいと思う。

同床異夢の地方分権

長引くデフレと産業空洞化で地方と首都圏との格差は回復不能と思われるくらいに開いてしまった。自殺者が3万人台になってから久しく地方ではいまでも高水準で続いている。地方の若年者流出型高齢化社会へのスピードは目を覆うくらいに速い。

今進められている地方分権は中央と地方の同床異夢の地方分権である。中央(国)は年金財政の破綻や、高齢者介護費用の負担増から国の財政を切り離そうとする。地方の課題は産業の振興と若年労働人口の呼び戻しである。このため、かっての藩幕体制時代に似た自治権を求めている。

地方活性化に向けて

このような同床異夢の地方分権を目指して、「地方でできることは地方で、民間でできることは民間へ」という小泉改革が始まって補助金・地方交付税・税源委譲の三位一体改革の一環として所得税、住民税の見直し案としてこの税率の変更により税源配分に目が付けられた、と聞く。

この税率改正案を地方活性化に向けて次のような提案をしたい。「個人住民税の税率は10%に一本化」とは反対に「所得税の税率は10%に一本化し、個人住民税の税率を5-40%の6段階」に変更すべきではないかと考えている。しかも、地方自治体はこれを上限税率とし、税率の変更権を認めることである。

税制は社会を変える

地方分権を確立するには税源を確立することが肝要である。このような税制をとった場合、選択権を多く持つことで地方ごとに活性化策を考えるであろう。

都市圏で功成り名を遂げた地方出身者の中には出身地に錦を飾る(住所を移す、会社の本店を移す)ことで、地方の税源が豊かになり、地方の財政基盤がより強固になり、ヨーロッパや外国に見られるように個性豊かな地方が出現するのではなかろうか。

たまたま地方の活性化策として政府が「二地域居住」政策を打ち出していることをテレビで見た。私も以前から交通網整備やIT技術の発達を活用すれば「二地域居住」政策は地方の活性化の役に立つのではないかと考えている。

以前に本欄で紹介した塩野七生著「ローマの街角から」を引用したい。

「善政の根幹は税制にあるという一事である。」「つまり、払わなければならないとは思う税金を、どの程度までなら重税感を持たせずに払えるかを配慮して決めた税率なのである。そして、その税率で払われる税金で賄えない分野は民活にゆだねる。少なくとも2世紀までのローマ帝国は、現代の言葉を使えば「小さな政府」であったと確言できる。21世紀は、どこの国で税金を払うかを、納税者が選べる時代になるだろう。税収を確保するためにも、税制度は「魅力的」に変わる必要がある。」(p.230)。

傍線を引いた部分を「21世紀は、どこの“国(出身地や居住地)”で税金を払うかを、納税者が選べる時代にしよう。」と読み替えて多様な魅力を持つ活力ある地域・地方が出てくるような税制を期待したい。

(小川 湧三)

 


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