ペイオフ完全実施

ペイオフ完全実施

ペイオフの実施をめぐって再延期論が再燃してきた。しかし、完全実施が予定されている。ペイオフが完全に実施されるとどんなことが起こるのだろうか。一つは銀行側の対応であり、もう一方は預金者側の対応である。

金融機関はどう対応するか

金融機関は「預金が流出する金融機関」と「預金が流入する金融機関」とにわかれる。預金が流入する金融機関は大手銀行、優良金融機関が予想される。

預金金利は下がり、普通預金などは金利をつけるより反対に一定金額以下の口座には口座管理料を徴収することになるかもしれない。これは既に欧米の銀行で行われていることである。貸し出しは調達コストが低い分金利競争力が強くなり、優良中小企業へのシフト・選別が強められる。

逆に、流出する金融機関では、預金のつなぎ止めのため預金金利が上昇し、貸出金利も高くなり大手行、優良金融機関から逆選別された中小企業へ傾斜することになろう。また、流出が続けば、貸出原資が縮小し、貸し出しの抑制や融資引き上げを強化することになる。

預金者側はどう反応するか

決済性預金については事業者が当該金融機関からの借入、取引条件等から急には動きにくいと思われるが、貯蓄性預金が中心である個人はとりあえず大手優良行や普通預金へシフトしたものの完全実施に備えて本格的に動き出さざるを得なくなる。

シフト先はいくつかあり、①さらに大手・堅実銀行へシフトするもの②郵便貯金振替決済口座へシフトするもの③株式、国債・債券、投資信託、商品、不動産、外貨などのリスク・マネーへシフトするもの④現金化し退蔵するもの⑤保険へシフトするものなどが考えられる。

リスク・マネーへのシフト

リスク・マネーへシフトする預金は当初少ないだろうが、一部では外貨や不動産へのシフトが始まっている。②の郵便貯金振替口座には利用規制④の退蔵資金にはデノミの政策リスクがある。これらが実施されると一気にリスク・マネーへシフトする可能性がある。

貸出金利の上昇が既に始まっており、さらに貸出金利の上昇が加速されると預金金利の上昇など金利の上昇→国債価格の下落→金融システムの破綻のシナリオも考えられる。

また、リスク・マネー化が進むと、インフレへ向かう可能性も無視できない。一たびインフレ懸念が生じると、流動化しているお金が一斉にリスク・マネーへシフトしインフレを加速する懸念も考えられる。

ペイオフが中小企業にどう影響するか

既に貸出金利の上昇、融資の逆選別、貸出の抑制、融資回収などは始まっている。勝ち組金融機関と取引している中小企業は金利面では優遇されるが、内容が悪いと取引ができなくなる。

預金が流出する金融機関と取引している中小企業は高い金利での取引を求められることになり、さらに経営内容が悪化する悪循環に陥ってしまう危険性もある。今後は金融機関の二極化とともに中小企業も急速に二極化していくものと思われる。

(小川 湧三)

 


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