今は異常時か、路線価の発表と収益還元法について

8月4日相続税の路線価が発表され、前年まで地価の下落率が落ち着いてきたのが、再び地価の下落幅が拡大し、今後も続くであろう、とのことである。新聞には「下げ止まり兆候消える」「企業、社宅切り売り・大量供給で下げ加速も」「影落とす金融不安」「地価下落債務者を圧迫・住宅ローン破産深刻」など不安を感じさせる見出しが踊っていた。

地価が下落すると土地を担保とする貸付金の不良債権化がまた一段と増加することになり、金融システム再生のために努力している金融機関が不良債権の対象となる債権額の確定ができない不安定な状態にある。

このような状態が続けば金融機関を中心とする金融システムがさらに収縮し破綻金融機関や倒産企業、失業がさらに増加するであろう。地価の下落は来年4月のペイオフの時期を目前にして、金融不安を加速させるだけである。

一方、一昨年来不良債権処理のため担保不動産を処分しやすくするため、担保土地の評価方法として欧米で用いられている収益還元法を取り入れようとしている。理論的には理解できなくはないが、土地、建物等の不動産に対する法制度、社会習慣が全く異なる欧米諸国の評価方法を何の前提もなしに取り入れてもいたずらに混乱を増すばかりである。

たとえば、土地所有者が賃貸住宅を建て、賃貸しようとするとき賃貸収入だけで建物への投資価格が回収できるのがやっとである。私の経験から言えばバブル時でも新築賃貸住宅の賃料利回りはおおむね8%から12%前後が大半であったように記憶している。現在でもそれほど改善されている訳ではない。このような状態では収益還元法で計算すると賃貸住宅を建てた途端に、土地価格がゼロになってしまう計算である。

いま収益還元価格をベースにした債権回収作業が進められている。昨年の中頃からの債券処理関係の物件取得相談が増えてきている。定期預金の金利が1000万円預金しておいても数万円の低金利では、預金をしておいても仕方がないので、土地付賃貸住宅で8%以上も家賃が入ってくるなら経費を差し引いても有利だと思うので買いたいがどう思うか、と言うのが相談の要旨である。

バブルと言われた時期に誰もバブルとは気がつかなかったように、路線価の大幅下落の発表は、今不良債権の処理が終わるまでの「異常時」に突入したことを告げているのかも知れない。

財産管理法人や買える力のある人たちは、物件を良く吟味した上で不動産投資を積極的に検討したらどうだろうか。いままで財産管理法人では新築賃貸が中心だったが、いまを「異常時」と考えれば、中古賃貸物件への投資も土地が「タダ」という計算も成り立つし、土地を法人に移転することが難しい財産管理法人では土地を取得し現金収入を増加させるチャンスでもある。

これから先のことは誰も確かなことはわからないが、今の地価下落が政策の失敗から起きたものだとすれば、今の「異常時」もやがては是正され正常にもどる時期が来ると信じたい。

(小川 湧三)

 


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