ゆりかごから墓場まで

少子化対策

『2030年までがラストチャンス−−。政府は新たな少子化対策「こども未来戦略」を閣議決定した。(略)プランが始まる24年は、実は節目の年でもある。合計特殊出生率は1974年から継続的に、人口置換水準を下回り始めた。少子化のスイッチが入ってからちょうど50年といえるのだ。』(23年12月27日付 日本経済新聞)

「こども未来戦略」の中身はNHKの12月24日の日曜討論で次のようにまとめていた。

◎児童手当の拡充
◎こども3人以上扶養の世帯支援
◎育児休業給付率の引き上げ
◎年間3兆6千億円の予算増

に焦点を絞ってきたが対症療法的な施策でしかないのではなかろうか。

さらに、日曜討論では人口問題について気になる数字を挙げていた。

◎人口構成の変化:現役世代と高齢世代の比率

1億人越えのとき10:1
1億人を切るとき1:1

◎人口減少に入っている中、唯一増えているのが85歳以上の方々、いま600万人から1000万人まで増える

地方における人口減少問題

さらに、昨年12月23日新聞各紙で国立社会保障・人口問題研究所が公表した令和32(2050)年までの地域別の推計人口を報道していた。

『●人口減東京以外で進行:32年地域別推計・11県は3割以上(産経新聞)●11県、50年に人口3割減:東京都40年にピークに減少』と、私見で言えば地方の衰退は大店法(大規模小売店舗立地法)による地方の商店街が崩壊消滅し、いわゆる地方の中産階級が崩壊・消滅してしまったのが影響していると考えている。

少子化対策は政府としても手をこまぬいていたわけではなく「少子化対策推進基本方針」「少子化社会対策基本法」はじめ数次にわたる少子化対策プランを策定してきている。しかし、実効を伴わなかったといってよいであろう。「チャイナデフレ」「少子化対策国民運動」でも取り上げたが〝失われた30年〟はグローバリズムに翻弄された30年で、止めはチャイナデフレであった。

高度成長期には人口が増加し平均年齢も年々伸び、いま、高齢者の介護が大きな社会課題として、その充実が求められ政府の政策課題としても最優先課題であった。いわゆる高齢者の「墓場まで」政策である。

しかし、今日の政策課題として人口減少問題が、岸田政権の「異次元の少子化対策」として取り上げられるようになった。働く女性を「孤育て」から解放し、幼児期からの子育て政策いわゆる「ゆりかご」問題を真剣に取り上げた。

ここに政策課題の連続性ができ今年は「ゆりかごから墓場まで」の政策元年と言ってもいいかもしれない。

これから始まる英国病

第2次大戦後、英国は経済が疲弊していたにもかかわらず「ゆりかごから墓場まで」という積極策を打ち出した。(中略)そして戦勝国だった英国の経済は、あっという間に敗戦国だった日本に抜かれたのである。

日本経済がこのまま低成長を続けた場合、心配なのは貧しくなる中で格差社会になっていくことだ。

国全体が低成長を続けても、グローバル化した大企業や一部のベンチャー企業は生産性を向上させて社員の給与を引き上げていくことができる。だが国内で生産性が低迷する大部分の中小企業の社員は、所得が伸び悩んだままになるからだ。

そこに積極財政のツケが回る。経済成長をもたらさない積極財政は「朝三暮四」の政策(見せかけだけの政策)で、将来世代がそのツケを払うことになる。(※)

衰退途上国への始まり?

よく、失われた30年と言われるが、その失われた30年はグローバル化の波に翻弄され沈没した日本の姿を現している。12月28日の日本経済新聞で初めて目にした「衰退途上国」の表現はまさにピッタリの表現と感じた。

「衰退途上国とは発展途上国の反対だ。発展途上国は高い生産性の伸びを続けて為替レートが高くなり、インフレになっても所得がそれ以上に伸びるので所得が先進国に追いついていく。一方、衰退途上国は低い生産性の伸びを続けて為替レートが安くなり、インフレになっても所得がさほど伸びず先進国よりもはるかに低い所得になる。」(※)

「米金融機関大手、ゴールドマンサックスの長期予想では日本はGDP規模で2075年にはエジプトやメキシコにも抜かれ12位に沈む」と予想している。

(※)出典/23年12月28日付 日本経経済新聞 Analysis:衰退途上国からの脱却「積極財政で成長」幻想、捨てよ

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代表 小川 湧三

 



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