新NISAと確定拠出年金

新NISA制度がスタートしました。非課税の限度枠が拡充され、無期限となり、使い勝手が格段に良くなりました。

一方で、確定拠出年金制度も税制優遇された制度です。

今回は、それぞれの制度の違いと、どのように使い分けたら良いか、見ていきましょう。

1 制度開始の背景

NISA制度は、「家計の安定的な資産形成の支援」「経済成長のために家計の金融資産を有効活用する」目的で、2014年「預金から投資」を促進するためのツールとして導入されました。

帳簿

確定拠出年金制度は、年金制度の1つで2001年より導入されました。確定給付型の厚生年金を補完する目的の企業年金が、市場環境の悪化で目標の運用利回りを下回り、年金基金の解散が相次いだため、確定給付から自己責任により運用する確定拠出へ移行することとなりました。

2 制度の概要

3 どのように制度を使い分ける?ライフステージでの使い分け

確定拠出年金60歳まで引出ができない
ポイントは、収入・年齢・資金化の期限

① 収入:

収入が高ければ、掛け金が全額所得控除になり、それだけで節税効果があります。まだ収入が低い、家計に余裕があまりない場合は、自由に引出しできないことがリスクになります。

② 年齢:

何年運用できるか?20代で始めれば30年超運用できます。少額でも長期運用の効果が期待できますが、まだライフプランが定まらず引出しできない為、拠出が負担となる可能性もあります。反対に50歳を過ぎて余裕ができても、運用期間が短ければ運用損がでる可能性が高くなります。

③ 資金化の期限:

受取方法・時期により、退職所得控除が適用できない場合もあります。また最大75歳までに売却し引出さなければなりません。その他、企業型の確定拠出年金(DC)の場合、転職する際には、損益に かかわらず全銘柄売却し、新しいDCまたはiDeCoへ移管する場合があります。

NISA加入条件や換金に制限がなく、いつでも資金が引き出せる

非課税投資枠で資産形成しながら、結婚や子育て、住宅購入など、必要な時に資金化して使うことができます。また、60歳以降もいつでも開始、引出しができます。運用中の配当や分配金を使い、相続の際には商品を売却することなく、そのまま次世代に引き継ぐことが可能です。

4 どんな商品を選ぶか?

目的 ⑴ 長期運用による資産形成・インフレヘッジ

つみたて投資枠・確定拠出年金・成長投資枠

•投資信託での分散投資
•基本は株式、余裕があればREITや金など資産を追加
•日本、先進国、新興国など地域の分散
•「為替ヘッジなし」を選択

資金が必要なタイミングで利益が出ている銘柄から資金化できるよう、複数の資産ごとの商品を持つと良いでしょう。

確定拠出年金や目的別、積立額が少額ならバランス型も選択肢ですが、預金で対応できる日本債券の割合は少なめで。

目的 ⑵ 配当金・分配金収入年金等の補完

成長投資枠

•個別株式
•高分配型株式投資信託
•REIT(不動産投資信託)
•債券、債券型投資信託

配当金・分配金は企業の業績や運用によって変化します。自分がよく知る・応援したい企業・成長が見込める企業や市場を選ぶようにしましょう。

目的 ⑶ 短期の収益

成長投資枠

•テーマ型
•急激な円高に備えた
「為替ヘッジあり」

買うことはできても売りのタイミングは簡単ではありません。市場の動き、情報などを得て自分で判断できる人に向いています。

5 2023年までに投資した商品はどうする?

〇 課税口座で保有する株式や投資信託

・今後も保有し続けたい銘柄であれば、いったん売却し、新NISAで買い直すと、配当・分配金も非課税になります。
・含み損が出ている銘柄は、利益が出ている銘柄を売却し損益通算すると税負担を減らせます。

〇 現在一般NISAで保有する株式や投資信託

・利益が出ている場合、今後も保有したい銘柄であれば、早い段階で売却し、新NISA口座で買い直すと良いでしょう。
・含み損が出ている銘柄は、値上がりが期待できるなら、値上がりを待って期限内に売却しましょう。

〇 つみたてNISA口座

・20年間非課税の為、当面そのまま保有で問題ありません。しかし非課税期間満了時には課税口座に移管されるので、長い運用期間を生かして利益が出たところで売却し利益確定すると良いでしょう。

相続で引き継いだ有価証券の取扱い

相続税評価の算出方法は同じですが、取得価額の取扱いは大きく異なっています。

課税口座の場合:

売却する場合、取得価額は相続時の時価ではなく、被相続人の取得価額を引き継ぎます。祖父から受け継いだ株を相続した父が亡くなった場合は、祖父が取得した時の株価を引き継ぎます。

NISA口座の場合:

相続開始時までの含み益は非課税、株式等の取得日は相続開始日となり、取得価額は相続開始日の時価となります。

現在課税口座で保有している場合、保有し続けたい銘柄であれば、価格が下がっているときに売却しNISA口座で買い直すのも選択肢となるでしょう。

まとめ

長く続いたデフレからインフレへの転換期を迎えています。インフレへの備えとして、不動産・金など現物資産を持つほか、証券投資が不可欠となります。個人または夫婦でバランスをとり、まずはNISA、収入に余裕ができたら確定拠出年金を検討しましょう。NISAと確定拠出年金いずれも、その投資の中心は、株式などの金融市場です。これから数年は価格の変動が大きくなることも考えられますが、自分の目的とリスク許容度を考慮しながら、必要以上に恐れず、リスクを軽減させる「長期・つみたて・分散」の仕組みを活用し、少額からでも始めてみましょう。

 



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