1945年の始まり

日本は4位に

産経新聞11月12日、「GDP独に抜かれ4位、インドも迫る」と題し「2023(令和5)年の日本のドル換算での名目国内総生産(GDP)が前年を下回って、4位に転落する見通しとなった。もはや、世界第3位の経済大国ではなくなるという衝撃もあるが、人口が3分の2のドイツに抜かれたことは円安、低物価、低賃金といった「安い日本」が定着し、長期的な経済の低迷を招いた深刻さを映している。」さらに「IMF(国際通貨基金)の予測では26年にインドに抜かれ英国も迫る。」と報じている。

失われた30年

よく、失われた30年と言われるが、その失われた30年は「グローバル化の波に翻弄され沈没した日本の30年」ともいうべきであろう。

1989年に起きたベルリンの壁崩壊に象徴される共産主義世界の崩壊により社会・経済のグローバル化の一歩が始まったところに、1990年に始まる景気循環によるバブル崩壊が追い打ちを掛け、不況脱出のための企業の海外進出が進み第一次グローバル化によるデフレが進んだ。さらに加えて2001年、チャイナデフレの要因となった中国のWTO加入を認め「赤ずきんを被った狼」を引き入れてしまった第二次グローバル化に対する時代認識の誤りが重なり合って30年にわたる長期のデフレとなった。

この間、グローバル化の波に乗って、日本企業は一斉に海外進出したが、国内に基盤を残した海外進出ではなく、国内基盤をそっくり海外(中国・東南アジア)に移転する海外進出もしくは海外移転であったため、国内の産業基盤を崩壊させ産業の空洞化を引き起こした。

それに伴い中小企業や労働市場をも崩壊させ、社会を支えていた分厚い中間層を中流から下流へ転落させ、社会基盤の脆弱化・少子化など様々な社会インフラを脆弱にした。

日本再生の始まり

1945年は第二次世界大戦が終わり戦後の混乱を経て復興を成し遂げて日本が再生してきたエポックメーキングの年である。

明治維新から第二次世界大戦終戦まで、大日本帝国が崩壊するまでが77年、米中対立が鮮明化したのを機に、ウクライナ戦争が始まってグローバル・エコノミーの時代の終焉した2022年までが77年。そしていま、さらに、世界の火薬庫と言われた中東で、ハマス・イスラエル紛争が勃発し中東戦争に発展しかねない事態が発生し、完全にグローバル・エコノミーの時代が終わったといえよう。77年前に戻り新たな1945年が始まろうとしているのである。

1945年からハイパーインフレ、預金封鎖、新円切替、ペイオフ、財産税等々戦時経済の精算が続いたように、これからグローバル化による産業崩壊・社会崩壊の精算が始まる。

何かが起こる・ブラックスワン

「弱り目に祟り目」という諺がある。日本にはまだまだ何が起きてもおかしくはないブラックスワンに囲まれているといっても過言ではない。

コロナパンデミックに始まり、ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス紛争のようにアメリカの力の間隙を狙ってこれからも台湾問題、北朝鮮問題などが日本をめぐる焦眉の懸案となって降りかかって来る可能性も取り沙汰されている。

さらに東京直下型地震、南海トラフ地震、富士山大噴火などいつ起きるかもしれない大規模な自然災害も懸案事項として挙げられている。

日本を疲弊させてきたグローバルエコノミーに翻弄された時代の終焉がはっきりした今、ゆでガエル状態の日本にその敗戦処理をする体力や気力があるであろうか。

日銀は消え、デジタル通貨?

2022年、FRB・ECBが相次いで踏み切った急速な利上げに追従できずゼロ金利を維持している日銀は大量の国債を抱え、もはや機動的な政策運営能力はない。

政府も財源を国債に頼るバラマキ型予算を編成し財政への関心を失っている。今年中に行われる新円切替が混乱なく行われることを切に望む。

最近読んだ本の中にこれからを示唆する記述があったので紹介する。

「2025年に米国の金融危機の連鎖として予想される銀行危機と財政危機の後は、財務省が日銀券でない政府紙幣のデジタル通貨を発行する。シナリオの選択肢の一つとして検討されているのではないか。」(※1)

「今、我々がすべきことは、長い戦後の夢から覚め、日本の厳しい現状を直視し、1945年に戻ってやり直すことです。」(※2)

※1『金利と通貨の大転換』吉田繁治 p.306
※2『シン・鎖国論』山岡鉄秀 p.310

LR小川会計グループ
代表小川 湧三

お問い合わせ

神奈川県川崎市で税理士・社会保険労務士をお探しなら

LR小川会計グループ

経営者のパートナーとして中小企業の皆さまをサポートします