人への投資

岸田政権「骨太の方針」

会長

参議院議員選挙も終わり自由民主党が圧勝した。岸田政権は今後3年間国政選挙がない「黄金の3年間」を迎えると言われ、いよいよ本格発進することになった。

6月7日岸田政権の経済財政運営の指針「骨太の方針」が閣議決定され発表された。その「骨太の方針」の柱が「人への投資」と言われ、「働く人への分配を強化する賃上げを推進するとともに職業訓練、生涯教育等への投資により人的資本の蓄積を目指す」としている。

項目を挙げてみると

◎セーフティネットの整備
◎リカレント教育促進の環境整備
◎給付型奨学金、貸与型奨学金の整備
◎NISA・iDeCoの改革による貯蓄から投資への誘導
◎科学技術投資
◎スタートアップ企業への環境整備

などが掲げられている。

さらに、春の国会の会期末直前、6月15日「こども家庭庁法」が成立した。

少子化や児童虐待、貧困など課題に省庁を超えて一元的に取り組むとのことである。近年多発していた子どもに関する社会問題に対処するためであろう。

子どもに関する課題は沢山あり、最近、子どもに関する記事、ニュースにマイナス・イメージの記事が多くなった。「引きこもり」「不登校」「ヤング・ケアラー」「子ども食堂」「赤ちゃんポスト」「内密出産」「子どもの家出」などなど。

「骨太の方針」に欠けているもの

1990年に合計特殊出生率が1・54に落ちて以来30年間政府は少子化対策を種々重ねてきたが改善の兆しは全く見えていない。

ついにイーロン・マスク氏から「出生率が上がらなければ日本は消滅する」とツイートされる始末である。

人口問題は30年~50年の超長期の課題である。

少子化が今年改善されても、その効果が直接現れるのは今年出生した子どもたちが成人に達し、社会で活動を始めてからになる。

こども家庭庁に少子化対策が役割が与えられたとしても、今までの延長線上にある労働力不足解消の手段(Mカーブ解消など)としての視点からしか対策は講じられないであろう。

人口減少対策を中心に据えよ

しかし、「人への投資」を旗印に掲げるのであれば、「人への投資」を正面に据えている「骨太の方針」に人口減少をテーマにした長期に基本問題を検討する機関の設置を入れて欲しいと思う。

6月2日付日本経済新聞「大機小機」欄で「国家盛衰に直結する人口対策」とのタイトルで『新しい資本主義実現会議では「人への投資」が議題となっている。が、国民の数や生産年齢人口が激減し、我が国の将来を担う子供の人口比率が50年近くも減少し続けている事実に焦点を当てる必要がある。こども家庭庁の設置、不妊治療の保険適用や保育の受け皿整備では足りない。未婚化・晩婚化対策、移民受け入れの大幅緩和や非嫡出子の権利保護など、総力を上げた人口増加策なくしては、早晩、我が国は衰退国への道のりを歩むのでないか。』と書いていた。

ハンガリーでは「人口減少の唯一の解決法は、国家が家族を守ること、家族形成に対する障害を取り除くことだ」として「2022年の予算で家族政策にGDPの6・2%を当てる」とのことである。
(『世界少子化考』毎日新聞取材班P.190、213より)

子ども保険より子ども年金を

少子化や子どもを取り巻く環境の劣化は「一億総中流社会」と言われた時代からバブルが崩壊しデフレに突入したところから始まっている。

格差社会が表面化したのは都内公園に「派遣村」ができて炊き出しやホームレスという言葉が流行ったころである。格差社会の出現によって親の経済力に大きな差ができて、子育て環境の悪化や晩婚化が進んできた。

子ども対策の基本は親の経済力(貧困化)に関係なく生まれてきた子どもが権利の主体として経済的に自立できるようにすべきである。

そのためには出生時に子どもを権利主体として「子ども年金」を成人に達するまで支給し、保護者が資金管理を行う仕組みを提案するものである。

類似の提案として「子ども保険」構想もあるが「人への投資」という観点から生まれてくる「子どもへの直接投資」としての「子ども年金」がふさわしい。



 

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代表 小川 湧三

 

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