第50回ブロックチェーンゲームで小学生が月2万円稼ぐ時代が到来❷

情報セキュリティ連載
第50回ブロックチェーンゲームで小学生が月2万円稼ぐ時代が到来❷

前回よりデジタル金融とコンピュータセキュリティの変貌について小連載をさせていただいています。今回は仮想空間に経済圏の原形を造り上げた 2 アクシーインフィニティってなに？についてです。

★ アクシーインフィニティとは

アクシーインフィニティとはブロックチェーン技術を使ったゲームでアクシーというペットをランドという仮想の土地で育成、バトルさせることで報酬を得られるゲームです。フィリピンのブロックチェーン企業が開発し、フィリピンを中心に人気が出ているゲームです。

具体的にはアクシーというペットを3匹用意するところから始まります。

ただこのアクシーは1匹日本円で数万円しており、3匹用意するには10万円程かかります。

アクシーインフィニティをプレーするのに日本円で初期費用に約10万円かかるため、平均月収が2万円ほどのフィリピンではかなり高価なものになってしまい、なかなか手が出ない状況です。

そこでアクシーを所有している人（マネージャーといいます）からこのアクシーを借りゲームをプレーすることで報酬を獲得、報酬からレンタル料を支払うシステムを採用、これにより、初期費用を抑えてプレー、報酬を獲得することができます。

このゲームで稼げる平均が月2万円程度であり、フィリピンの月平均月収とほぼ同額となります。

このため、フィリピンでは爆発的な人気になっています。

★ アクシーが月平均2万円の価値を生んでいる構造

ゲームで稼げる報酬はSLP、AXSという実際の暗号資産取引所で換金することができる暗号資産です。

SLP、AXSが価値を保っているのはアクシーが唯一無二のキャラクターを技術的に証明できること（これをNFTといいます。詳細については下の「★ NFTとは」で説明します）、アクシーの貸し借り、育成にSLP、AXSが必要であり、アクシーインフィニティの世界でアクシーを貸し出す雇用主と労働者のような関係性が生まれ一つの経済圏を作り上げていることにあります。

キャラクターのコピーなど価値を損なう不正がNFTでは起こらず、ゲーム内で使われる通貨も価値を保ちます。結果としてゲームユーザーが増え必然的に需要も上がりSLP、AXSの価値は上がります。

これは需要と供給の概念から必然的に起こるものです。

ゲーム内で経済圏を作ることができているため、実際の通貨に換金する価値を持つようになります。

★ NFTとは

デジタルの世界ではコピーをすることは比較的容易ですが、ブロックチェーン技術は時系列を記録する技術のため、一部分だけを切り取る（コピーする）ことが不可能です。

ブロックチェーン技術は取引などの時系列を大勢の参加者の半数以上の承認を得て記録する技術で一部の改ざん（コピー）をするには、超高性能コンピュータで改ざんを行いたい部分に時系列の分岐を作成し、時系列の分岐を保ち続けるか、大量のトークンを保持し決定権を保持し覆すなど、参加者の半数以上の承認を覆すようなことをしない限り一部分だけ切り取るということが不可能な技術です。ブロックチェーンでは一部という概念は存在しません。

この時系列を記録できるブロックチェーン技術をデジタルデータに組み込む技術のことをノンファンジブルトークン（Non-Fungible Token（略してNFT）／非代替性トークン）と言います。

例えば音楽データをNFT化する例を挙げます。音源データはMP3などの形式で大量にコピーすることは可能であり、同じ曲のMP3が10個あった場合どれがマスターデータであるかがこれでは分かりません。しかしながら、最初に作成した音源をブロックチェーンで紐づけさせるとこの音源データしかできないハッシュ値というものが生成されます。他の音源コピーデータをブロックチェーン上に記録させても異なるハッシュ値ができ、この例に挙げた10個の音源データはすべて異なるハッシュ値をもつことになります。

ここではマスターデータの音源から生成されたハッシュ値に作者が作ったというデータもブロックチェーン上に記録することができます。結果として、作者のデータも記録したMP3データが本物となり、他の9個のハッシュ値には単にコピーという経過しか記録されていないことから本物と偽物の判断ができるようになります。このNFTはブロックチェーン技術をデジタルデータに特化させたもので、デジタルデータの本物と偽物が見分けられる仕組みになっています。アクシーインフィニティのキャラクター、アクシーもこのNFT技術を使っており、デジタルデータでありながら唯一無二のキャラクターであることが証明され価値が担保され、育成で強くなったアクシーはより価値を高めます。

なお、ブロックチェーンの改ざんは時系列すべてを改ざんする必要があるため現状ではほぼ不可能ですが量子コンピュータの登場で状況が変わります。こちらは小連載の最終章でお話します。

次回はNFTの将来性についてお話させていただきます。

NFTの技術はゲーム業界を大きく変える技術です。アクシーインフィニティが示したような仮想空間の経済圏がさらに大きな経済圏を造り出しています。大きくしている要因はビットコインを始めとする仮想通貨の存在です。ブロックチェーン上で動くビットコインのような仮想通貨は基本的に誰かがコントロールしている訳ではありません。インターネットが死なない限り動き続けます。誰かが止めることもできません。Suicaなどのデジタル通貨と大きく異る部分です。規制を受けないため、アクシーインフィニティのような仮想空間で得た報酬を現実世界の通貨などに交換する手段として最適なものとなります。

この暗号資産は緊迫するウクライナ情勢でも存在感をしめしています。

※ 本記事に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも記事の内容として記載したものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。