高齢者の金融資産は不良資産か

会長本号は先月号「高齢者の金融資産」の続きである。先月号の原稿を書き上げた直後、10月19日の日本経済新聞のコラムに「人生100年時代の金融転換」というコラムが掲載された。

その内容は金融機関の業務を「預貸業務から資産の管理・運用を代行するアセット・マネジメントへ」の転換だとし、「金利の引き上げは金融資産を持つ高齢者の所得を増やし、消費をサポートする効果が期待できる。つまり、人生100年時代の金利上昇は善なのだ」と言う。

私は平成27年7月に「預金利息『5%』の政策を」という文章を掲載した。「金利の上昇は善」「金利の引き上げは高齢者の所得を増やす」などという論調はここ数年注意して新聞雑誌を見ているが初めてではないかと思うくらい新鮮に映ったのである。

金利ゼロの時代

金利ゼロの時代が続いている。金利ゼロの時代は先月号でも書いたが、ロバート・キヨサト氏流に云えば蓄積した財産から溢れ出てくるものがない、生み出されたものがない、あるいは維持するのにコストがかかる不良資産に過ぎない。

別の観点から言えば、貯めても貯めなくても同じ、昔流で云えば庭にカメを埋めて後生大事にいざ鎌倉の時、山内一豊の妻の美談のようにただひたすらため込むようなもので、一般庶民には全く関係ないといっても過言ではない。

「宵越しの金は持たない」

いま生きていくだけのお金があればよい。働いてかせげるならば無理をせずその日暮らしを楽しめればよいという、江戸時代の「宵越しの金は持たない」庶民の考えが出てきてもおかしくはない。

ゼロ金利時代に人生100年時代の蓄えを意識するなら、インフレを考慮しなくても今日の稼ぎの半分あるいは3分の2を蓄えていかなければ、高齢社会において今と同じ生活水準を維持することができない状態なのである。

極端な言い方をすれば、現在の生活を半分ないし3分の1に切り詰めて高齢化社会に備えよというのと同じなのである。

巨大資産運用会社

おりしも、10月16日の日本経済新聞では金融機関の在り方について「投信、大手銀も脱手数料」「三菱UFJは残高のみで評価:『長期保有で顧客本位』へ」とあった。

10月24日の日本経済新聞に「資産運用3巨人。世界の1割を握る」として世界最大の資産運用会社が紹介されていた。

運用資産は3社で14兆2,600億ドル、日本円で1,568兆円に上る。日本の金融資産に匹敵する資金を運用しているのである。

米国では資産運用業の規制の枠組みは「顧客の利益」のみを重視するよう求められていて、日本の金融機関で行われている、いわゆる「回転売買」で手数料を収益源とするのではなく、超過運用収益やコストを最小限にしてお客さまが収益で十分まかなえる預かり手数料で運営している。

その運用資産残高や運用収益分配金など長期的な運用を基本としてその運用成績は10%を超えるという。

11月8日に発表された日本の投資信託「成績表」によれば平均してお客さまの4割が損失という。比較基準が異なるから一概には言えないが「顧客の利益」ではなく「生産者・企業の利益」を中心に銀行や証券会社に儲かる商品が売られているからであろう。

国民に良質な金融資産を

私は国民に良質な金融資産を提供して高齢化社会を真に長寿社会として祝福できる社会にしてほしいと願いながら、「金融機関はどう変われるか」「カネ余り」「預金利息『5%』の政策を」「平成の渋沢栄一出でよ」などアベノミクスの成長戦略に期待しながら明治維新の大胆な改革改新に匹敵するような成長戦略を期待してきた。

世界にある良質な資産運用会社が日本にも育つ環境を創出して欲しいとも願っている。世界中にある「優良な金融資産」は、国内規制のために海外でしか購入できないものが多い。とりあえず、日本人が直接外国の金融資産を国内でも自由に買えるようにすることも重要な政策である。

現在のような貧相な金融政策では「預金から投資へ」というスローガンも寝言に聞こえるのである。
真の福祉政策とは何かと問われれば、国民に良質な金融資産を提供し豊かな高齢者を育てることこそが真の社会福祉政策である、といっても過言ではないであろう。

 

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三

 


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