器を磨く

会長今年9月号の当社社長のコラム『会社の器』の結論が『社長の器』が小さいほど『会社の器』が大きくなるのでは、という一見誤解されそうな表現だったので、私なりに感じていることを書くことにした。

社長のしごと

会社は「社長の器以上には大きくはならない」といわれている。私は社長のしごとは

①仕事を磨く
②会社を磨く
③自分を磨く

の三つであると常々考えている。50年間いろいろな社長さんと係わってきて感じたところである。

創業間もない人たちの中にはまだ社長らしくなくとも、一生懸命仕事をして社員が一人増え二人増えして5、6人の規模になってくると「社長さん」と声をかけても何となく「サマ」になってくる。経験上14〜15名、あるいは30〜35名が一つの節目のように思う。

それを超えるには経営者として意識的に会社を磨く、自分を磨くという意識が求められると思うからである。

社長の器はどう磨くか

社長の器は仕事磨き、会社磨きの過程で川底の石、浜辺の砂利のように急流の流れや荒波の中でもまれていつしかきれいに丸くなっているように、社長の器も自然と磨かれてくるところが多分にある。

社長の器とはなにか、いろいろな見方があるであろうが、私は社長の「こころ」の在り様、志、夢、目標、生き方などと「こころ」で思い感じていることを実現する「実践力」「実行力」であると感じている。

経営者として地域一番、業界一番、あるいは日本一の会社にする、世界一、あるいは〇〇一番の会社にするというような志や目標を持ち、それを実現することによって会社がどれだけ社会に認知されてきたかが経営者の具体的象徴として社長の器として認知されるのであろう。

自分の師は居るか

私は社長の成長も「守破離」に則ってみると良く見えるのではないかと思う。特に中小企業においては経営者もいきなり成鶏になるのではなく、〝ひよこ〟から幾段階かの成長過程を経て一人前の経営者になるのである。

後継者は創業者や先代を師として最初は創業者・先代の一挙手一投足をなぞり、やがては自分の考えを提案実行する。そうして創業者・先代を越えて自分のスタイルにあった経営を確立し、先代を超える経営者となっていくのである。

松下幸之助氏は中村天風氏に師事したといわれている。稲盛和夫氏は松下幸之助氏を師とし、松下氏亡き後は中村天風氏の思想を師としているといわれている。

ある社長は「何かに迷った時、決断をしなければならないときには、『孫子』を繰り返し、繰り返し読んでいる」といって、擦り切れそうな岩波文庫の「孫子」を見せてくれた。

師とまではいかなくとも日頃相談できる人がいるか、経営者として切磋琢磨できる環境があるか、冒頭述べたように経営者は経営者によってしか磨かれないのである。

経営者の器磨きに何をするか、経営者の中には一芸に秀でた人も多い。ある経営者は毎月京都へ行って茶の師匠に師事している人もいる。

同業者団体、地域経営者団体、異業種交流的な団体などの中に経営者の手本となる人を見つけている人もいる。共通の課題・悩みを解決しようとして集まる経営者向けの講座など経営者としての資質向上の、経営者としておなじ目標を目指して学ぶ中から心許せるメンターを見つける人もいる。

倫理法人会のモーニングセミナーの講話の中で中島旻保氏は〝逆転からの発想〟の最後の結論として「経営とは自らを磨くこと」と締めくくられたのが強く印象に残っている。

最初の師は創業者

創業者は創業の当初からお客さまに喜んでもらうために商品や製品、サービス、を磨きに磨いてきた。会社もそれなりの規模になるまで良い会社にしようと会社を磨きに磨いて今日まで来ているのである。

創業者はこの仕事磨き、会社磨きの過程で多くの人たちと切磋琢磨して社長としての自分の器を磨いてきている。

しかし、創業者は富士山と同じで近すぎるので無数のごみが目につくため、コミュニケーションがうまくいかない人たちが意外に多い。

倫理法人会では奥さんの美点100カ条を書いて夫婦愛和の実践を奨めているが、事業の後継者も器磨きの一つの方法として創業者・先代の「良いとこ100カ条」を書き、創業者・先代の師をなぞってそれを乗り越えるのも一つであろう。

 

 

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三


神奈川県川崎市で税理士・社会保険労務士をお探しなら

LR小川会計グループ

経営者のパートナーとして中小企業の皆さまをサポートします


お問い合わせ