不動産は“どこ”をみる?

不動産地図【街路条件にまつわる怖い?話】

前月号では、街路条件について、どこで、何を調べてくるか極めて大雑把ですが説明させていただきました。今月号はこれらにまつわる怖い?話をさせていただきます。

【ケース1】

Aさんは都心部で働くサラリーマンです。昨年お父さんが亡くなり、K市にある自宅その他の土地をいくつか相続しましたが、相続税の納税のため、不要な土地を売却することにしました。その土地を含め周辺は昭和40年頃に分譲されたところで、狭いですが現況幅員3.8mの市道が配置されています。対象地は道路より約2m高く接面していますがコンクリート擁壁も設置されていますし、道路と約12m接しています。毎年発表される国税路線価も良好な不動産市況を反映して毎年上昇カーブを描いており高値での売却を期待していました。

ところが、不動産業者に仲介を依頼してみると、業者から次のような答えが返ってきました。

「接面道路は基準法の道路であるが、本来4.0mの幅員が確保されている市道であり、現況3.8mしかないのであれば、擁壁を撤去するなりして4.0m確保できるように措置しなければならない。そのためには対面の所有者と当方で互いに後退するか、当方が一方的に後退して4.0mを確保しなければならない。また4.0m確保の証明として当方、道路管理者である市、対面所有者との間で境界等の確認をする必要がある。そして、これらには土地家屋調査士の協力が必要なので、その費用を業者で見積もってもらったところ200万円程度の費用がかかるうえ、6カ月くらいの期間がかかる」とのことでした。

Aさんにとっては寝耳に水。「路線価がついているのにどうして??」。

これは古い分譲地で多くみられるケースです。正面街路が2項道路だったら道路中心線から2mのセットバックだけでよかったのですが、道路台帳にはばっちり4.0mと記載しており、役所としても引き下がれない。それに対面の所有者だって自分の土地が減るようなことに同意してくれる保障もありません。結局Aさんは高い仲介手数料のほかに測量費用等の余計な費用を負担し、さらに市や対面の所有者との話し合いにも多大な時間を割かれる羽目になってしまいました。

【ケース2】

Bさんは母から相続した都心郊外にある約300㎡の土地に相続対策を兼ねて賃貸アパートを建築しようと考えていました。確かに周辺では同じような地主が相続対策でマンションやアパートを建築しています。路線価をみると1㎡あたり20万円(坪あたり66万円)でした。なお、周辺一帯は曾祖母の代から相続税支払いのために道路を作って少しずつ切り売り(分譲)してきたところで、対象地はその残りです。Aさんとしてはせめて対象地だけは先祖代々の土地として守っていく所存です。建築業者と一回目の打ち合わせでなんとなくですがアパート経営のイメージも湧いてきました。ところが、1週間位経ったある日建築業者から「アパートは建てられない」というのです。

理由は、「対象地が接している道路はAさん名義の私道である。幅員は4.0mあるかないかだが、建築主事の窓口で確認したところ、基準法の道路ではないという判定が出ており、原則建物は建てられない。個別に許可を得れば建築可能であるが、役所の規制で、セットバックが求められるほか、建てられる建物も戸建住宅に限られ、アパート等の共同住宅は建てられない」とのことでした。Aさんはアパート建築を断念せざるを得ませんでした。

【ケース3】

Cさんは母親から、都心から電車で約45分のところにある、1,000㎡の土地を相続しました。めぼしいのは土地だけで、金融資産はわずかであったため、相続税支払いのためこの土地を手放すことにしました。接面道路は幅員3.5mの行き止まり私道です。

電話で不動産業者に机上査定を依頼したところ街路条件はよくないが、高台に位置し、見晴しがよいので戸建住宅地分譲業者が1億5千万円くらいで購入するだろうとのことなので、その業者に売却の媒介を任せることにしました。ところが、数日後その業者から電話がかかってきました。

「対象地は500㎡以上ある土地なので、戸建住宅地分譲を行うためには役所の開発許可が要る。しかし、甲市の開発指導要綱では開発予定地は、幅員4.0m以上の道路に接し、その道路は4.0m以上を確保したまま幹線道路に連続していないと開発許可は出ない。対象地が接している部分の道路幅員は4.0m以上の幅員であるが、幹線道路に至るまでの間に4.0mに満たない部分が相当数あり、4.0m確保するには相当数の地権者から既に宅地となっている部分を買い取るなりしなければならず、多額の買収費用、数年の期間を要すると見込まれるため、戸建住宅地分譲業者はまず買わないだろう」とのこと。

Cさんは売るに売れないと言いたいところでしたが、相続税を滞納する訳にもいかず、やむを得ず大きい土地でも買ってくれるという個人に7千万円で売却しました。

このほかにも怖い?事例を挙げるときりがありませんが、道路は土地の価格形成において非常に重要な役割を担っているということがお分かり頂けたでしょうか。評価に携わる税理士も十分注意したいものです。もしかしたら、相続税の申告で市場価値を上回る高い評価してしまっているかもしれませんよね。本当、税理士にとっても他人ごとではありません。

 

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