タックスヘイブン

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パナマ文書でタックスヘイブンがクローズアップされ沢山のタックスヘイブン関連の記事が出ていて、国際的にタックスヘイブンと認定された国は91カ国(この中にはアメリカも含まれている)に上るとのことである。

タックスヘイブンと認定する基準は①高い秘匿性②租税回避であり、OECD租税委員会では①まったく税を課さないか、名目的な税を課すのみであること②情報交換を妨害する法制があること③透明性が欠如していること④企業などの実質的な活動が行われていることを要求しないこと。という四つの基準を示している。

先月の「パナマ文書」のなかでタックスヘイブンには三つのルーツがあると書いたが、そのうちのふたつ、スイスは「お金を守る」システムを作り、ロンドン・シティは「お金を集める」システムとしてのタックスヘイブン・ネットワークを作ったといえる。

もうひとつの第三のタックスヘイブンは過疎地に産業やお金を生み出すために「企業を集める」システムとして税金の優遇やゆるくて柔軟な会社制度を謳ったタックスヘイブンが生まれたのである。

アメリカはタックスヘイブンか

そのルーツはアメリカのデラウエア州といわれている。

アメリカは連邦制をとっているために州の自治権がきわめて強い。そのため内政に関しては州が原則として立法権を持っているので、財政状態が悪かったデラウエア州は企業を誘致するためにゆるくて柔軟な会社法と州税の優遇を与えて企業の誘致をした。

連邦制を敷くスイスの各州においてもこのような州税やゆるくて柔軟な会社法を持つ州があり、このようなゆるくて柔軟な制度と税金の優遇をセットとして企業を誘致しようとする第三のタックスヘイブンの起源となったのである。

 

企業誘致のための優遇税制

日本のような全国一律を原則とする国家では考えられないことだが、一歩日本を出れば、思想信条はもちろん、独立国家のほかにも自治権を与えられた地域も沢山あり、民主主義国家、共産主義国家、王制を敷く国家、独裁国家など統治形態もさまざまな国家・地域が存在している。

冒頭にも書いたが世界で91カ国が何らかのタックスヘイブンの要素を持っているのである。人口が少なくて産業がない国や地域が生きていくための政策として、富裕層やグローバルに活動している企業の誘致やお金をどう取り込んでそのおこぼれにあずかるか、必死に考えて取り込む仕組みを考えたのが「タックスヘイブン」という仕組みだとしてもあながち間違いだとは言えまい。

ロナン・キャラハン著「タックスヘイブン」によれば、①「ドイツの脱税は、行政官による災い多き社会福祉国家とその金融政策の現在の縛りから、多少なりとも逃れようとする国民による正当防衛である。スイス流の体制の外での貯蓄は、資産家ばかりではなく生産的な中小規模の事業にも権利が与えられている大切な事柄だ」②ジャージー島について「島をますます魅力ある存在にしたのは島そのものではない。相対的に自国の魅力を減じるような、主要工業国の相対的に高い租税構造だ」と書いている。

スイスやジャージー島を魅力あらしめているのは、先進国の高い税率構造や複雑な税制や規制にもその原因があると指摘しているのである。

グローバリゼーション

タックスヘイブンがクローズアップされたのは共産主義が崩壊し世界が一つに向かってグローバル化したことに大きな要因がある。

タックスヘイブンの問題は、国家主権、租税国家における課税権の問題と、民主主義の源泉である国民個人の財産権、人権や自由ともかかわっていて、タックスヘイブン悪玉論一色に塗りつぶされている感があるが別の一面もあることを理解しよう。

お金に色はない

パナマ文書、あるいはタックスヘイブンで問題になるのは「お金に色がない」ところからくるもので正当に形成された財産を保全する目的とは関係なくどんな素性のお金でも色がなくなることである。アメリカが9・11同時多発テロ事件以来神経をとがらせているテロ関連資金や麻薬、北朝鮮の核開発資金などの資金封鎖網をかいくぐるタックスヘイブンに神経をとがらせていることは痛いほど良く解かる。タックスヘイブンにダークマネーやグレーマネーが混在しているところに問題の複雑性がある。

 

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三


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