M&Aが日常化する

M&Aの変遷

毎年3月下旬に日本M&A協会の国際会議が開催される。今年はシンガポールで開催された。今年のトピックスは、M&Aが日常化したことにある。今までの中小企業のM&Aの変遷を簡単に振り返ってみよう。

「2008年は事業承継の元年」 といわれ、中小企業の事業承継の一つとしてM&Aが位置づけられた。きっかけは2005年中小企業白書で、中小企業の減少が顕著で、その原因が事業承継者の不在にあることが明らかにされた。

その分析を受けて中小企業庁が「事業承継ガイドライン」を発表し、「親族内承継」が前提とされていた事業承継を、「従業員等への承継・外部からの雇い入れ」と「M&A」を事業承継のスキームとして明示したことから始まる。

2年後の国際会議のテーマは、リーマンショックで顕在化したグローバル化の波がチリ地震の津波のように日本へ押し寄せてきて「事業承継」から「中小企業の生き残り戦略」としてのM&Aへと変わってきた。

いまは多くの経営者はM&Aに関するセミナーも経営の重要な選択肢の一つとして当然のように参加するようになった。

中小企業のM&Aは日常的に

20 年前、アメリカへ視察に行った ときには、アメリカでは中小企業のM&Aは、「ハッピーリタイアメント」の一つの手段として日常的に行われていた。いま自分がやっているビジネスをパートナーや希望者に売却してリタイアをする、あるいは新たなビジネスに挑戦するというようなことが日常的に行われていたことを思い出す。

いま、アメリカではインターネットを使ったスモールビジネスの売買が日常的に行われている。このような時代が日本でも始まろうとしているのである。

スモールM&A市場の形成

日本でも不動産市場のように中小企業のM&Aマーケットが出来つつある。
不動産取引主任資格のような中小企業のM&Aを仲介するM&A資格制度が始まった。日本M&Aセンターと一般社団法人金融財政事情研究会(「金財」と略称)とでM&Aに精通した人材を養成する「M&Aシニアエキスパート認定制度」を創設したのである。

その制度の概要は日本M&Aセンターと教育研修機関の株式会社きんざいと共同で「M&Aシニアエキスパート養成スクール」を開設し、その修了者らを対象に「金財」が「M&Aシニアエキスパート認定試験」を実施し、合格者に対して「金財」が「M&Aシニアエキスパート」として認定する仕組みである。

一方、中小企業のM&Aマーケットの形成は日本M&Aセンターが開発した「@net」システムに譲渡案件、買収案件を登録することにより、低廉なコストでM&Aの仲介ができる仕組みができている。不動産売買のように中小企業のM&Aが身近に日常的に行われる時代になった。

これからの中小企業経営

日本における後継者不在問題は日本社会の長寿化に伴う構造的な問題である。以上のような環境ができてくると、中小企業の経営者でも、従来の「親族内承継」にこだわらずに、いつでもどこかに適任者がいると意識を持って、経営をすればよい時代が到来しつつあるのである。

事業を承継しようとする後継者は、自社とコラボする事業をM&Aにより経営して経営手腕を磨き、自社に欠けている分野を補完することにより企業を発展させるチャンスが来ている。

従業員・社員であっても創業者、経営者と一体となって経営を発展させることにより、名実ともに経営の一翼を担い、経営者となるチャンスが到来しているし、法的な枠組みも整っているのである。

会計事務所の役割

中小企業経営者の相談相手はどの調査を見ても会計事務所が一番だ。しかし、相談相手がないという回答はもっと多く、私たちはお客さまの真の相談相手になれるように自己研鑽をつまなければならない。

会計事務所の社員にもチャンスが到来している。従来も当社の社員がお客さまに見込まれて経営者の右腕として招かれた例や、後継者が自社に入社する前に当事務所で会計実務、経営実務を習得してから自社に戻る例も何人もある。M&Aの日常化の中で会計事務所も中小企業の経営者を育てる新たなファームとして期待される時代が来たのかもしれない。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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