海外通信 NO.129 東南アジア 経済成長の光と「未富先老」の影

海外通信 NO.129
東南アジア 経済成長の光と「未富先老」の影

年金の「十分性」「持続性」「健全性」を指数化した「グローバル年金指数(MCGPI)」2025年版において、オランダ(85.4)やアイスランド(84.0)などの欧州福祉国家が世界最高評価の「A」を獲得しました。特筆すべきは、シンガポール(80.8)がアジアで初めてA評価を獲得したことです。充実した給付水準と制度の持続性を高い次元で両立させていることが証明されました。

一方、急成長国のベトナムやタイなどの東南アジア諸国では、豊かな国になる前に高齢化が押し寄せる未富先老(みふせんろう)」というリスクに直面しています。

例えば、三段階評価「C」のベトナムでは、公的年金制度(VSS)は存在するものの、カバー率は全労働者の約3割。製造業や公務員は加入している一方で、人口の多くを占める農民や個人事業主は制度の枠外に置かれています。儒教精神が根付くベトナムでは、子が親を養う「孝」が美徳とされ、都市部からの「仕送り」が事実上の年金として機能してきました。

しかし、急速な都市化と核家族化により、この伝統的な相互扶助にも綻びが見え始めています。

そこで存在感を増すのが、ベトナム特有の「現物資産」への強烈な信頼です。街の至る所に金(ゴールド)を扱う店が軒を連ねているのは、激しいインフレや通貨下落を経験した世代にとって、銀行の現金よりも「金」「土地」こそが、数十年後の自分を守る唯一の確実な財産だからです。

その一方で、デジタル化の波も押し寄せています。スマホアプリを通じて数百円から始められる「マイクロ投資」や個人年金サービスが普及し、若い世代を中心に「国や子に頼り切らない自立した備え」への意識が芽生えつつあります。
「超高齢社会」である日本の評価は、三段階評価の「C」に留まっています。先進国の中では依然として低水準であり、特に少子化に伴う制度の「持続性」という重い課題が改めて浮き彫りになりました。

制度に守られた日本に生きる私たちも、ベトナムの人々が持つような「自ら資産を守り、育てる」という主体的な姿勢を、今こそ学び直すべき時なのかもしれません。

 

 

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