日本流〝おもてなし〟

昨年末「新語・流行語大賞」に滝川クリステルさんがオリンピック招致のプレゼンテーションで使った印象的なフレーズ「おもてなし」が大賞を受賞した事は記憶に新しい。この「お もてなし」を実践し『プロが選ぶ旅館ホテル100選』で実に33 年連続1位を獲得している旅館がある。

石川県能登半島の決して便利とは言えない地にありながら、訪れる顧客の心を捉えて離さない「加賀屋」である。彼らにとって「おもてなし」とは、「宿泊客が求めていることを、求められる前に提供すること」と定義している。

『加賀屋の流儀/細井勝著/ PHP研究所』にその内容がある。

ある団体客の宴会が始まろうとするとき遺影に気づいた客室係が、その人がこの旅行にいちばん参加したがっていた会長であると聞くと、食事を始めるのはちょっと待ってくださいと頼み部屋を出て行き、数分後にその客室係は朱塗のうるし盆に料理を盛った小さな高杯を乗せ戻ってきた。『陰膳』である。団体客たちは震えるような感動をおぼえ、しばらく言葉を失ってしまったとの事。

「宿泊係は『経営者』、自分たちの持ち場(部屋)はテナントのようなもので、そこで迎える宿泊客に心を砕き、満足してもらわなければいけません。お給料はお客さんからいただいているようなものであり、旅館に働かされていると思ってはならず、旅客係一人ひとりが経営者としてお客さんに接しなければいけない」

「私たちはお客様が玄関にお入りになった瞬間から、片時も目をそらさず、お一人お一人の行動や言葉に神経を注いで、この方に何をして差し上げたら喜んでいただけるのか、そのことばかり考えています」という。

お客さまと接する十分な時間をかせぐのが、工費4億円をかけた調理場から客室を結ぶ自動配膳システムである、この仕組みにより客室係がお客様に接する時間を多く割く事を可能とし、おもてなしを実現している。

加賀屋の哲学、その礎を築いたのは先代女将の小田孝さん。365日休むことなく働き、自分のことよりもお客様と従業員のことを一番に考えていたとのこと。ある客室係が親にも受けたことがない恩を加賀屋の女将から受け、生涯加賀屋のために働きたいと心に誓った。

物語でなく人生と人生が出会う温泉旅館の原点

無機質で合理的な洗練されたシティホテルのような接客では無く、浴衣に着替え、くつろげる行き届いた空間を個性ある客室係が提供する、それがリピートの絶えない「おもてなし」なのだろう。

お客さまが何を望み、何を必要としているかを探し求める従業員が居る、その従業員の行動をサポートする設備投資、手本となり原点となる経営者の姿勢、そのバランスでこの日本一の「おもてなし」が実現しているのかと感じる。

このほっとタイムスが発行される頃には 34 年連続へ記録を更新しているかも知れない。

 


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