長寿社会における働き方②

長寿社会

9月12日、百歳以上の人口が5万4397人と発表された。今では、百歳で矍鑠(かくしゃく)として働いている人たちも珍しくはなくなった。三浦雄一郎氏のように 80歳になってエベレスト登頂を果たしたニュースは長寿社会における生き方に大きな励みと目標になる。

百歳は定年 65歳からすれば 35年、最年長の方は115歳であるから、50年生存することになる。人は働いて生きていくか、働いて余剰を残し、余剰によって生きていかなければならないのである。

低金利時代の今、長寿社会においては、定年後を働いた余剰だけで生きてゆくことは至難の業であることは一目瞭然であり、長寿社会における働き方は必然的に高度成長期のような賃金労働が求められた時代と異なる働き方が模索されなければならない。

ライフプランの重要性

長寿社会における働き方は単に生活のために働くというより、自分はどのような人生を送りたいのか、自分はどんなことをしたいのか、どんな生き方をしたいのかその目標を達成するためのステップを考えて仕事をしていくことが重要になる。

私がある学会を通じて知った方は、10年ごとに人生・仕事の目標を設定し、公認会計士、弁護士、外国弁護士と着実に実行していった。

アメリカでは1970年代から「自分の時間を自分の意思で使えるようにする」、そのために最初は生活のためのお金を稼ぎ、やがて、自分の時間は自分の意思で使えるようにしようと、いわゆるライフプランやキャリアプラン・リタイアメントプランの作成が提唱され確立してきた。ロバート・キヨサト氏が出版した「金持ち父さん、貧乏父さん」は典型的なその考え方であり、ライフスタイルを示している。

働き方の変化

長寿社会においては、自分の能力を高める時期、自分の夢・目標の実現のために懸命に働く時期、社会への貢献・還元を目指す時期、ゆっくりとした時間とコミュニティの中で過ごす時期それぞれの時期における働き方が変わってこなければならない。

企業で働く働き方も自ずと変わらざるを得ない。大企業のように資本と経営が分離された企業では、そこで働く人たちの賃金はコストとして画然と区別されて企業へ労働を売った対価として認識されている。

このような大企業で働く働き方と中小企業のように資本と労働が一体となった創業者たちのもとで働く働き方とは自ずと働き方が変わってくるのである。

アベノミクスにおける雇用創出政策

企業に働く人たちも企業に一生働き続けることを求めるよりも、自分は何を、どんなことを身に付けて生きていくのかということを主体的に決めていかなければならない。外国で行われているジョブ・ホッピング、キャリア形成を目標に企業や職業を選んでいくような働き方が求められるのである。

アベノミクスはデフレ脱却、需要創出のために大企業に賃上げを求め、あるいは、非正規社員の正社員化を求めている。このような雇用創出政策は長寿社会における働き方とはそぐわない。

長寿社会における働き方は時間を売る労働から自分の時間をどう生産的にするかという視点に変わってくるのである。

こう考えると中小企業政策の見直しや雇用契約の在り方については正社員・非正規社員の区別なく、企業・労働者双方がそれぞれの持つ目標を定期的に確認し合う有期雇用契約が望ましいものと言える。

私たちも昭和 50年代から新卒定期採用を行っているが、私たちが求めるものが必ずしも社員が自分の将来設計に必要と考えるものとの乖離が生じてくることは止むを得ないのである。

このように考えると、アベノミクスにおける雇用政策は、長寿社会に適応した大きなグランドデザインが欠けているように見えるのである。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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