財産管理法人の効果的な活用

第286回 財産承継研究会
「財産管理法人の効果的な活用」
株式会社LR小川会計 代表取締役 小川 泰延

平成24年度税制改正のなかで、私たちに関わるもとしては、所得税関連は、平成25年度分から給与所得控除額の上限が設けられ、平成27年度分から所得税の最高税率の引き上げが検討されています。

一方、法人税関連では税率の引き下げとなりました。相続税関連では、平成27年度分より基礎控除額は、5000万円+1000万円×相続人数から、3000万円+600万円×相続人数と引下げられ、相続税率の上限は引上げになります。相続税の最高税率は55%に引き上げるなど、税率構成を見直しています。

これにより、相続税納税者は増え、相続税納税額の増加が予想されます。

個人にとっては、税の負担は大きくなりますが、所得と財産を分散することを考えた場合には、所得税と法人税・相続税と贈与税といった組み合わせにより、税率を調整し納税時期をコントロールすることで、家族全体の納税額を調整することは可能だと考えます。

例えば財産のうち500万円を一人の子供に引き継ぐ場合、一度に贈与をすると、贈与税は52万円ですが、5年間にわけて贈与する場合の贈与額は、贈与税の基礎控除内となります。

さらに、相続税と比較をするならば、相続財産に対する相続税率が20%の者であれば、相続税は100万円となります。個人の所得は増加するほど所得税率が高くなり、最高税率は40%となりますが、法人の場合には、所得金額800万円を超える部分の所得税率は一律30%であるため、法人を設立し、所得を法人へ移転することで所得税の負担を抑えることができます。

また、個人の不動産収入は、一定の要件を満たした同居の親族であれば、専従者給与を支給することで、家族へ所得の移転をすることは可能です。法人を設立し役員として、子や孫に役員給与を支給することで、限られた個人に所得が集中することなく分散が図られ、相続対策につながります。

ただし、法人を設立する場合には、その事業年度が赤字でも法人住民税(均等割)が必要となります。また、法人の決算・申告時の費用負担が発生するなどのデメリットもあります。

財産管理法人には、いくつかの種類があります。

「不動産管理型」は、不動産を所有している個人が法人に管理を委託します。法人は、家賃収入の一部を管理料として収受し、子や孫に給与を支給することで所得の分散が図れます。管理料は、家賃収入の10%程度が妥当であり、個人から法人へ所得の分散をする効果は少ないです。

「不動産所有型」個人の所有する賃貸物件を法人へ移転することで、不動産所得を個人から法人へ移転することができます。この場合、個人は法人から給与をもらうことで所得税等の軽減に役立ちます。

また、個人に集中する金融資産の増加を防ぐ効果もあります。

法人名義で賃貸物件を取得して3年が経過すると、その建物の帳簿価格と相続税評価のかい離が自社株の評価に反映して、株式評価額が「0」になることもあり得ます。その時に子や孫に自社株を贈与するなど、法人を利用した賃貸経営は、所得対策のみならず、相続対策にも大きな力を発揮します。

まずは、誰に・何を・どのような形で残すかを決め実行することです。

 

♥ 次回の財産承継研究会の開催日 ♥

2012年9月28日(金) 18時30分~20時30分

☎044-811-1211(石井・駒まで)

お申し込みは こちら

 


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