スイス国際会議

スイス国際会議・今年のテーマは「資産保全」

日本M&Aセンターでは毎年3月海外の情勢把握を兼ねて国際会議を開催し、今年は通算 19 回である。

今回のテーマは「資産保全」で、「スイスの紹介~資産保全と運用」 「ファミリー、事業、ファミリーオフィスに関する戦略」などであった。

M&Aセンターが今まで国際会議で取り上げてきたテーマとは異なっているが、推測するに、①M&Aセンターが手がけている売り手の経営者が事業の売却報酬として受け取る金額が大型化してきていること、②M&Aを通じて起業成功者の多くが海外生活者で増えていること、もう一つ③ギリシャの財政破綻に関連して浮上している日本の財政問題、などが影響していたと思われる。

ギリシャ問題と日本の情勢

私は第3のギリシャ問題に端を発している日本の財政国債問題に焦点を当てて資産保全の問題を考えてみたい。

日本の財政状態は、① 国債の発行額が税収を超える状態が3年連続となること(昭和 20年:第二次世界大戦敗戦の年以来)②国債の対GDP比率が200%を超え、ギリシャ以上であること③国の債務が1000兆円を超え、国債を消化してきた国民の金融資産では消化しきれなくなってきていること、などがある。

今、ギリシャで起きているインフレや年金カット、国債の 50 %カットなどが日本でも起きる可能性がきわめて高くなっている。これらは今年に入って主要な雑誌、メディアなどで報道される頻度が高くなっていると感じているのは私だけではあるまい。

戦後日本で起きたこと

昭和 20 年終戦後日本で起きたことは昭和 21 年 2月に金融緊急措置令により、①預金封鎖 ②新円切り替え、それに続き同年 11 月に財産税法により金融資産の強制申告と課税、昭和 25 年富裕税法を創設して財産価格 500万円以上の人に対して一切の財産に対して課税した。

その結果インフレは8000%まで達したといわれている。簡単に言えば1億円が125万円の価値になってしまった。その上預金封鎖、新円切り替え、財産税、富裕税で個人財産が消滅してしまったのである。

このような財政破綻が表面化する「Xデー」 は昨年 12 月に発売された「もし小泉進次郎がフリードマンの『資本主義と自由』を読んだら」では2015年、日経ヴェリタス1月 29日号では2013年末、月刊文芸春秋5月号によれば今年の6月消費税増税断念を契機に日本国債の格付けが引き下られ、CDSの高騰、金利の上昇、ヘッジファンドの売り浴びせ、プログラム売買の暴走により国債の暴落が始まる、というストーリーであった。

どのようにして財産を保全するか

このようなことが起こらないことを誰もが望んではいるが、日本の財政問題も構造的なものである以上、いつでも起こりうることとして受け止める必要がある。

想定外と言われた東日本大震災も起きてしまったのである。東日本大震災のあと、反省を込めて危機管理の在り方が問われているが、その一つに釜石市の津波防災教育にある避難の三原則の中に「率先避難者たれ」というのがある。

財政破綻したアルゼンチンやロシアでは海外に外貨資産を移していた人たちが生き残ったといわれている。これに従えば、今後予想される財政破綻という事態から自らの財産を守ろうとすれば、急いで資産の海外シフトをしなければならないことになる。「バブルの物語」の著者ガルブレイスによれば、バブル崩壊の直前まで新しいパラダイムの到来と主張していた有名な学者がいたそうである。

どこまで信じるかは各自の判断であるが、地震に対する危機管理対策を講じておくように、財政破綻という危機に対しても予防策を講じておくことは一人一人の自覚にかかっているのである。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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