「卵より鶏が大事」
復興財源に増税?
民主党が復興基本方針を発表し、財源を増税に求め 10・9兆円の案を発表した。しかし、当然ながら党内の反対を受けて最終政府案では金額を削除したが増税を玉虫色の表現で妥協した。
東日本大震災の復興は 国を挙げて取り組まなければならないことは誰が考えても当然のことである。しかし、膨大な復興資金の財源をどのように調達するかが、焦眉の急務である。
天変地異、飢饉に際しては免租が為政者のとった歴史的な措置であり、復旧・復興に当たっては国有財産の処分や蓄積を取り崩して賄うのが為政者の行動である。
その昔、仁徳天皇は 夕餉(ゆうげ)の支度時にかまどの煙が上がっていないのをみて、民の疲弊している状態を察して、年貢を免じたという故事がある。
民主党は復旧復興の原資は、当初、華々しく事業仕分けをやったように、まず、歳出削減や不要不急の財産の処分などで捻出する作業を行うべきである。これこそパフォーマンスをやりすぎてもやりすぎることはない。災害の被害を適切に仕分けし、そのうえ、それぞれにあった財源調達方法を検討すべきであろう。
増税はグローバル社会 では難しい
増税はグローバル社会では難しい。「鶏が先か、卵が先か」という比喩があるが、増税は鶏を衰弱させ、取りたい卵も産まなくしてしまう。
戦後、日本が財政再建に当たったドッジラインと呼ばれる超緊縮財政のもとに復興を果たしたのは、世界銀行からの借款と資金の傾斜配分、93 % にもおよぶ超累進課税の税制と、優秀な国民と官僚制度があったためと思っている。
しかし、今回の大地震は戦後の全国規模の荒廃とは異なり、大規模とはいえ東日本に限定されていること、グローバル化により、戦後のように超過累進税率の増税による資金還流をはかることはできず、企業・人材の海外流出が加速してしまうであろう。
災害被害の仕分けと 財源の区分
今回の東日本大震災については、被害の総額を事業仕分けではない人が仕分けを行って、それぞれに応じた財源対処方針を確立すべきである。私なりに仕分けしてみると次のようになる。
まず第一は、地震・津波による遺体捜索・瓦礫処理や仮設住宅に対する現状復旧費用である。
第二は、広範に及ぶ原子力災害、放射能被害に伴う賠償補償である。
第三は、これらの災害により破壊された道路、港湾等の公共インフラや産業インフラ、生活インフラの整備・復旧費用である。
第四は、地場産業の復興再建を含んだ被災者一人一人の生活再建である。
第五は、今回の大災害を教訓に今後の産業構造の変化や新しい産業の創造である。
このように被害を仕分けすることによって財源の調達や手段が異なってくる。
政府紙幣の発行を
これらの仕分けをした上で、第一から第三までのものについては国債の発行や増税によらず、国有財産の処分と政府紙幣の発行によって賄うことが筋だと考える。
政府紙幣の発行は最後の切り札、劇薬として反対もあるが、地震により国富が一瞬にして消滅してしまった、その後をどう補填するかを考えたときに、国が信用を創造して補うことが望ましい。
政府紙幣への発行は国債の発行と違って償還期限はなく、災害国債の発行による財政破綻懸念を防ぐことができる。いま震災を契機に急速に進んでいる円高対策としても効果があるものと思う。
支出目的が明確なため日本銀行が金融機関を通じて資金を供給するのとは異なり、金融機関に滞留せず民間に行き渡り需要効果が極めて大きい。懸念されるインフレに対してはデフレ対策として有効である証左となろう。
現在の日本の置かれた状況を冷静に見るとき、政府紙幣の発行はさまざまな効用をもたらす。
税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三
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